平成23年度税制改正に関する提言の解説
財団法人全国法人会総連合
はじめに

 全法連では、本年も全国大会に向けて「税制改正に関する提言」をまとめ、発表することになりました。この提言は、各県連の要望事項を集約し、税制小委員会で検討後、税制委員会の取りまとめ作業、理事会での承認という一連の手続きを経て、まとめあげたものです。
 ところで、わが国経済は、一応昨年3月を底に回復に向かっていると言われています。しかし、実感として余りピンと来ません。今回の景気回復の主因は、中国向け輸出の急増や政府によるエコカー減税やエコポイント制度による自動車、薄型テレビ等の販売の急増による耐久消費財の回復によるものです。いわば国の内外の経済対策によってもたらされたもので、とても自立的回復には至っていません。
 景気を自立的に回復させるためには、一体何が必要か。それは、まず政府がしっかりとした成長戦略を立て、日本経済を活性化させることが重要です。日本経済活性化のために、是非とも必要なのは、中核的な役割を担う中小企業が元気を取り戻す施策が必要です。その中でも税制改革は不可欠な課題です。
 来年度税制改正の具体的な最重要課題として、法人税率の引き下げ(軽減税率を含む)と事業承継税制の確立を掲げました。
 この解説の作成は、税制顧問が担当することになっており、今回は柳島佑吉が担当致します。

総  論
第一 経済・財政・社会保障制度の改革

 日本経済社会の変貌する姿が、はっきりと分かるようになってきました。その中でも最大の問題はやはり人口の高齢化でしょう。また、同時に少子化の現象もクローズアップされてきました。こうした中では、過去の成功体験等が全く通用しないことになるのです。
 日本の人口は2004年の12779万人をピークに、2100年には6400万人とほぼ半減すると言われています。それに伴い、総人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)が急速に上昇すると見込まれています。日本の高齢化率は2008年で221%、2025年には287%、2050年には357%に上昇します。
 そして、日本経済にとって最大の問題は、15歳から64歳までの生産年齢人口(いわゆる現役世代)が、今後、急ピッチで減少していくことなのです。
 こうした現役世代は、労働によって日本経済に貢献し、保険料を支払って高齢者の年金や医療、介護を支えてくれる人たちです。日本の生産年齢人口は、1995年の約8700万人をピークに減少し、2010年には8100万人、2030年には約6700万人とピーク時から2000万人も消失すると見られています。そして40年後の2050年には約4900万人と、戦後すぐの1950年の水準に戻ってしまうのです。
 現役世代と高齢者の比率を見ると、現在、現役世代(1564歳)約3人で1人の高齢者を支えている状態が、2025年には18人で1人の高齢者を支えなくてはいけない状態になります。
 人口の高齢化は、経済活動全体の活性化を停滞あるいは失わせる半面、公的医療、年金制度に対する財政需要は、制度を手直しするとしても、大幅な増大は避けられません。こうした前提のもとで、ある程度納得のいく社会福祉水準を維持する場合、国民はどのような形でそのコストを負担すべきかが問われてくることになります。税金か社会保障負担か。税金の場合、所得税等の直接税あるいは消費税等の間接税のどちらにウェートを置くべきか。まさに問題が山積しているのです。
 ところで、日本の社会保障制度は、年金、医療保険、介護保険等全てが、高齢者が使う費用をその時の若い現役層が保険料や税で負担する財源方式(これを賦課方式と呼びます)をとっています。こうした制度は、かつての高度成長時代にその原型が作られたため、若い労働力があふれ、経済が高成長によって分け前が増えていくことを前提とした仕組みになっています。経済が右肩上がりで、若者の数が増加している時代は安泰でしたが、現在は全く逆の状態です。このままの状態では、国民皆保険・皆年金といった制度は破綻してしまいます。
 こうした中で、政府は財制運営戦略を発表し、「強い経済、強い財政、強い社会保障を一体的に実現する」と宣言していますが、どのような方法で実現するのか等の具体策には触れていません。国の借金は現在900兆円を超え、国内総生産(GDP)の約19倍ありますが、政府の新目標では、@国・地方を合わせた基礎的財政収支赤字を対GDP比で2020年度までに黒字化 A債務残高対GDP比を21年度から引き下げる−の二本柱を掲げています。しかし、問題はその道筋です。一定の経済前提による試算によると、20年度の赤字は217兆円で、本年度赤字308兆円の半減にもなりません。財政赤字を黒字化しなければ、債務残高は低下しません。
 予算増加の典型的な事例は、社会保障費です。来年度予算編成で、社会保障費は本年度の273兆円から286兆円と高齢化に伴う自然増で13兆円増えます。これに子ども手当や高校授業無償化等の政権公約を盛り込むのですから、財政赤字は膨らむばかりです。
 お金は天から降ってくるものではありません。最後は国民に負担増となって跳ね返ってくるのです。そこで、一国全体の経済規模を表す国民所得に対する税金・社会保障負担の比率が重要になってきます。この比率を国民負担率と呼んでいます。
 国民負担率の国際比較を試みると、高い順から次の通りとなります。スウェーデン707%、フランス622%、ドイツ517%、イギリス483%、日本401%、アメリカ345%。政府依存型のスウェーデンと自助努力型のアメリカが対極に位置しています。日本はどちらかというとアメリカに近い数字です。しかし、1970年当時を見ると、日本の国民負担率は243%でアメリカの345%と比較しても低かったのです。この約40年間にアメリカの国民負担率が上昇していないのに日本は16%も上昇しています。
 さて、将来、日本の国民負担率はどこまで上昇するのでしょうか。一見すると、アメリカに近いのであまり上昇しないように見えますが、それは間違いです。日本の社会福祉制度は国民皆保険、皆年金に象徴されるように、既に西欧型のシステムになっています。アメリカの自助努力型に比べると、明らかに違うのです。今後、人口の高齢化に伴って、公約医療、年金制度を現行のまま続けると、国民負担率が50%をかなり上回るのはごく自然の成り行きと言っても過言ではありません。
 一般に国民負担率の上昇は、日本経済の活力を低下させ、成長を大きく阻害すると考えられます。ですから、国民負担率を将来50%程度に抑えるという国民的合意は制度の合理化等で死守しなければいけません。

第二 行財政改革の推進

 自民党から民主党政権に変わり、早速、内閣府に行政刷新会議が設置され、昨年11月、第一弾として予算要求の無駄を洗い出すための事業仕分け、今年45月には、第二弾として独立行政法人と公益法人を対象とする事業仕分けを実施しました。
 この事業仕分けの方法は、行財政改革の観点からは評価できます。しかし、肝心の財源確保については、第一弾の仕分けで3兆円以上の歳出削減をする目標がわずか7000億円程度に止まり、国民の期待を大きく裏切りました。第二弾も削減額は600億円程度で、作業の限界を露呈しました。
 公務員のリストラ問題についても同様です。組合に支配されている政党がどうやって公務員の定数削減や人件費カットを行うのかという根源的な問題と疑問があります。民主党のマニフェスト(政権公約)は、国家公務員の総人件費を2割削り、11兆円を生み出す計画です。しかし、本年度予算では、定員見直しなど1400億円に止まりました。8月に国家公務員給与15%減の人事院勧告が出されましたが、完全実施しても歳出削減効果は790億円に止まります。さらに大幅なリストラ策が必要なことは言うまでもありませんが、民主党の支持団体である国家公務員労組の了解を得る必要があります。
 公務員問題は、国家公務員だけではなく、都道府県や市町村で働く地方公務員の問題もあります。地方自治体の中には、職員の退職金を支払うために、地方債を発行して新たに借金を重ねるところも出てきています。
 一般的に、公務員や役所仕事には必要以上に規制が多く存在しています。古い時代の前例や規制に縛られて経済社会環境の変化に素早く対応できない仕組みになっています。また、公的な立場から財、サービスを提供するのが基本原則になっており、他に競争者もいないので、民間企業のように経営を効率化してコストを削減するというインセンティブが働きにくいという弊害があります。
 そこで、水の流れが止まって、淀みができた川のように、段々と水は濁り、新陳代謝は停止します。そして、経済活動に例えると、組織や人間が硬直化し、活力が失われていくことになります。
 まさに今、わが国の置かれた状況がそうでしょう。多くの仕組みがかつての高度成長の時代に作られ、成長拡大というパイのおこぼれに預かる形で制度設計が行われてきました。しかし、少子高齢化社会の現在では、このままの制度存続は不可能です。
 官のリストラをさらに進め、官にしかできない業務サービスは別にして、民間にできるものは民間に開放するという発想の転換が必要になります。
 責められるのは公務員だけではありません。事業仕分けの張本人である国会議員をはじめ、地方議員の数も多過ぎはしませんか。民間企業の血の出るようなリストラを見習うべきでしょう。

第三 国・地方のあり方

 財政が苦しいのは、国だけの話ではありません。地方の債務残高も膨れ上がっています。地方自治体の財政難には、2つのパターンがあります。第一は、バブル崩壊後に税収が大きく落ち込んで苦しくなった大都市部のケースです。地方税は法人所得に依存しているため、景気変動から受ける影響が大きいのです。
 もう一つのパターンは、歳出の決定権が国にあるために、地方の単独事業等で苦しくなるケースです。大半の自治体はこのケースに当てはまります。現在の地方財政制度の仕組みの下では、自治体が自ら財政運営できない不自由さもありますが、半面、不足分を地方交付税という形で国が補填してくれるため、どうしても放漫経営になりがちです。
 現在、国と地方の税収比率を見ると、国が3であるのに対し、地方が2です。これに対して、歳出の比率では逆にと地方の方が多くなっています。この差を地方交付税と補助金(国庫支出金)という国からの依存財源で穴埋めしているのが現状です。
 これから地方分権の時代に突入するわけですから、各自治体が住民のニーズにあった行政を展開できるよう、地方財政制度も大きく見直すことが必要になります。
 地方分権を真に進めるためには、各自治体に課税自主権を与え、独自財源を調達する道を開くべきでしょう。もちろん、費用の全部を地方の独自財源に委ねると、豊かな自治体と貧しい自治体との格差が広がるため、国が地方の基礎的なサービスを提供するための最低限の財源調整制度は必要になります。
 そのための条件として、国と地方の役割分担をしっかり決め、民間に任せられるものは民に開放するという行政の効率化が重要になります。
 最近、議論が高まっている道州制も行政の効率化の観点から大いに議論を進めるべきでしょう。地方分権の観点から、医療、福祉、警察、消防等の基礎的サービスは国の役割として全ての地域で確保して、それを超える部分は地方に任せる。道州制の下では、道州が広域的なインフラ整備、産業振興、国土・環境保全、防災対策の行政を地域の実情に応じて展開し、住民に身近なサービスは市町村が行う。そして道州制への移行に伴い、国の出先機関を原則廃止にすれば、公務員の削減にも繋がるはずです。

第四 税制改革のあり方

 税は、国・地方が提供する公的サービスの財源です。税がなくては、政府活動は機能しません。効率性重視の徹底した行財政改革を前提とした上で、政府活動に必要な税収額を誰が、どの程度、どのように負担していくかを決めるための基本が公平・中立・簡素の三原則です。
 また、現在のように経済のボーダレス化が進むと、国際的整合性も重要になるでしょう。
 しかし今、課税原則の中で一番に重要視すべきなのは簡素性でしょう。現在の税制は、何度も細かな改正を繰り返して、迷路に入り込んだような状態になり、常識ある国民にも理解できません。
 また、税制を構築するにあたっては、効率化の観点が重要です。効率化とは、簡単に言うと、経済社会の活性化に役立つ税制のことです。特に、地域経済の担い手である中小企業の活性化に焦点をあてた税制の構築が求められます。
 その中でも、具体的には法人税率(中小企業の軽減税率を含む)の引き下げと事業承継税制の確立等が是非とも必要です。特に中小企業の軽減税率18%は20094月から20113月末までの時限立法なので、それを恒久化し、税率をさらに引き下げるべきです。

第五 租税教育の充実

 人間が集団で社会生活を営むためには、税金が必要不可欠な存在になります。
 福沢諭吉は「国を支えて施しを受ける」と述べましたが、国防、治安などの公共サービス、あるいは道路、橋などの公共物を提供してもらうためには、そのコストを誰かが負担しないと社会生活は成立しません。つまり税とは、国や地方自治体が提供する行政サービスの対価として支払う性質のものです。
 世間では、このような税金をめぐる本質の議論があまり行われていません。税金を払わないで、公共財の提供にタダ乗りしていると、やがて国や地方自治体は破産してしまうことになります。
 納税者のことを英語ではタックス・ペイヤーと言います。その真の意味は「税金をキチンと支払って、その代わりに税金の使い道を厳しく監視する人」のことです。その意味で、社会全体あるいは学校等の教育現場での租税教育を充実させる必要があります。

各  論
第一 法人税制について
1.法人税の税率の引き下げ
 21世紀は、国が企業を選ぶのではなく、企業が国を選ぶ時代と言われています。今や経済活動に国境はなく、企業は地球規模で活動を行っています。そうなると当然、税においても国際水準を強く意識しないといけません。諸外国に比べて税率が高ければ、国内企業は海外に逃避し、海外からの日本への直接投資の減少が進むことになります。
 そうでなくても最近の円高の進行で、この夏、経済産業省が行った緊急調査では、製造業の4割が拠点を海外に移すと回答しました。国内企業の海外進出が盛んになると、当然のことながら、産業の空洞化が加速し、それに伴って雇用が減り、失業率上昇の要因ともなるでしょう。
 その意味で法人税は、最も大きな転換を迫られている税と言えるでしょう。
 わが国の法人税の実効税率は4069%で、先進諸国の中では、アメリカと並んで最も高い国なのです。他の国では、企業の国際競争力確保や投資誘致の観点から、法人税の税率を引き下げる国が増えています。主要国の法人税率を比べてみると、アメリカ(カリフォルニア州)4075%、イギリス28%、ドイツ2941%、フランス3333%、中国25%、韓国(ソウル)242%となっています。
 法人税率の引き下げの前提条件としては、不必要な租税特別措置等の廃止で課税ベースを拡大した上で、少なくとも欧州・アジア主要国並みの30%以下の実効税率とする必要があります。
2.中小企業軽減税率の引き下げ等
 資本金1億円以下の中小企業については、その担税力に配慮して、所定の所得金額について軽減税率が適用されることになっています。そして、平成21年度税制改正で法人税の軽減税率が22%から18%に引き下げられました。中小企業の軽減税率はこれまで法人税の基本税率の引き下げに合わせて行われてきましたが、今回の改正では軽減税率単独で引き下げられ、基本税率との差12%も過去最大となりました。
 しかし、18%の税率は、200941日から2011331日までの間に終了する事業年度の所得金額(年800万円まで)に適用される時限立法です。ですから、この措置を時限的なものでなく、少なくとも恒久化するとともに、さらに一層の引き下げが必要です。また、1981年以来据え置かれている軽減税率の適用課税所得金額を1600万円程度にまで引き上げるべきです。
3.その他
 法人税制で改正すべき事項は、他にもあります。この提言書では、@交際費課税の見直し、A役員給与取り扱いの見直し、B同族会社の留保金課税制度の廃止、C電子申告の活性化−の4項目を挙げておきました。@の制度は、1954年に企業の資本蓄積を図る目的で設けられたものです。しかし、現在は企業の消費を促し、景気回復に役立てるという観点から、現行制度の大幅な見直しが必要となります。2009年度の経済対策で、中小企業の交際費の損金算入限度額が400万円から600万円に引き上げられましたが、それでは不充分であり、引き続き損金算入限度額の引き上げ、損金不算入割合(10%)の撤廃、資本金に関わりなく一定の損金算入を求めます。Aについては、会社法の改正、企業会計の変更に伴い、税制面でも役員給与の取り扱いが大幅に変わりました。その中で利益連動給与について、同族会社の損金算入が認められていません。そこで一定の条件の下で、一般会社と同様にこれを認めるよう制度の見直しを求めるものです。Bの制度も1954年に設けられたもので、適用対象となる特定同族会社がその所得から配当を行い、法人税を納付した後の内部留保に対し、一定の留保控除を差し引いたうえで残る課税留保金額に一定の税率で法人税を課するものです。1株主グループによる持株割合等が50%を超える会社が適用対象とされていますが、平成19年度改正で資本金が1億円以下の会社については、資金調達の困難さや資本蓄積促進の観点から、適用除外となりました。これで事実上、中小企業はこの制度から外れることになりましたが、課税制度そのものは残っているので、その廃止を求めるものです。Cについては、平成19年度改正で個人についての電子申告控除(税額控除)が創設されたものの、20103月末の利用率は依然454%に止まっています。そこで、地方税との電子申告との一体化、さらに法人・個人について恒久的な税額控除をしてはどうかという提案です。
 この他、政策目的を達した租税特別措置を廃止する半面、中小企業の技術革新等に役立つ措置の新設、配当の二重課税を防止するため、欧州各国で行われているインピュテーション方式と呼ばれる制度の採用などが重要項目となります。

【参 考】インピュテーション方式
 配当の二重課税を防止するため、株主の所得計算において法人段階で支払った法人税を含めて、個人の所得税を再計算し、既に納付した法人税を税額控除する仕組み。

第二 個人所得税制について
1.所得税と住民税のあり方
 所得税は、俗に「税金の王様」と言われています。その理由は、今日世界の主要先進国で所得税は単一の税金として最大の収入を上げているからです。しかし、わが国の現状を見ると、所得税の内容には欠陥が多く、基幹税としての地位を低下させてきました。近年、所得税の税収は減収の一途をたどり、対国民所得や諸外国に比べ負担割合が低下しています。もちろん、景気の低迷やデフレ等の外部要因も影響していますが、構造的な原因が大きいのです。所得税は、国民各層に広く薄く負担を求めるのが本来の趣旨ですが、現在、就業者のうち5人に1人は税金を納めていない「税の空洞化」現象が起きています。一部の層だけに課税がしわ寄せされるのでは、とても公平な負担とは言えません。
 政府は、来年度税制改正で所得税の最高税率を40%から50%に引き上げる検討をしていると言われますが、所得税の最高税率(地方税を含めると50%)は国際的に見ても高い水準にあり、高税率は労働意欲を失わせ、高額所得者は法人と同様、海外へ逃避してしまうかもしれません。
 次に制度面について触れますと、平成18年度改正で、地方分権推進の観点から、所得税(国税)から住民税(地方税)への税源移譲(税金の移し替え)が行われ、所得税の税率区分は4段階から6段階、個人住民税は3段階から一律10%に変わりました。その趣旨は、国の所得税は累進税率によって高所得者ほど負担が重く、低所得者の負担を軽くする仕組みにして社会的な公平を保つ。他方、地方の住民税は、あくまで各種行政サービスの対価を住民で出し合うのが本来の姿だから、一律の税率にして各個人に対して公平に負担させるというものです。
 その意味からすると、個人住民税の均等割(市町村民税年額3000円、道府県民税年額1000円)の引き上げは、行政への住民参加の観点からも必要となります。
【参 考】
1)地方税を含めた所得課税負担割合(対国民所得比)の国際比較(財務省資料)
   日本 72%、アメリカ131%、イギリス139%、ドイツ121%、
   フランス 100
  *日本は平成22年度当初予算ベース、諸外国は2007年の数値。
2)個人住民税の税収見込み(総務省資料)
   平成19年度121339億円(均等割2349億円、所得割118990億円)
   平成20年度126176億円(均等割2383億円、所得割119457億円)
    平成21年度126402億円(均等割2422億円、所得割119882億円)
2.各種控除制度の整理合理化
 所得に対する税の負担が重いかどうかを調べるためには、2つの方法があります。一つは、税率の水準がどの程度かということ、そしてもう一つは、どの範囲の所得が課税されているかという課税ベース(課税所得)の大きさを比べることです。
 ですから、所得税で仮にある一定額を徴収するとして「広い課税ベースと低い税率」か「狭い課税ベースと高い税率」かという2つの選択肢があり得ます。どちらの方が経済、社会にとって望ましいかは明らかです。同じ所得を稼いでも、前者の場合は税率が低く手取り所得は多いのですが、後者の場合は税率が高いので手取り所得は少ないのです。
 さて、日本の所得税の現状は、3つの基本的な人的控除(基礎、配偶者、扶養)に各38万円ずつを認めています。さらに、納税者の個人的な事情を考慮して、特別な人的控除(障害者、老齢者、寡婦(夫)、勤労学生)が設けられています。こうした人的控除に加え、きめ細かい所得控除が数多く決められています。
 日本の所得控除制度の最大の欠陥は、雑多な諸控除が数多く認められ過ぎているという点にあります。不必要な所得控除が多過ぎることは、特定の納税者だけが利用できる抜け穴が存在し、課税ベースを狭くして税の不公平を助長しているということです。この際、不必要な控除は廃止して、基礎的な人的控除に統合する必要があるでしょう。
 次に問題となるのは給与所得者の経費の取り扱いです。日本では、給与所得控除という概算控除制度の下で、給与に応じて控除額が増加する仕組みで、平均で収入金額の3割程度が所得控除されています。例えば、給与収入が500万円の場合、給与所得控除の額は収入の308%にあたる154万円になります。このように、日本で給与所得控除の水準が高い理由は、サラリーマンの経費的部分に加えて、事業所得等他の所得等の調整という要素が加わっているためです。
 ちなみに、諸外国の例を見ると、米国では給与所得者の必要経費について、自主申告制度の下で、概算控除か実額控除(実際の経費を控除)を選択するシステムを取っています。しかし、概算控除の水準は、日本に比べ非常に低い水準になっています。ドイツ、フランス等でも同様です。
 そこで、給与所得者が特定の支出をした場合、控除を受けられる特定支出控除の拡大と併せ、給与所得控除のあり方を再検討する必要があるでしょう。
3.少子化対策
 日本の将来人口は2005年から減少を始め、このままの状況で推移すると2100年の人口は6400万人とほぼ半減するとみられています。
 今後も経済成長を続けるためには、労働力の確保こそ重要な要素となります。その意味で、人口の急激な減少は是非とも避けなくてはいけません。
 生まれてくる子供たちが勤労者世代の仲間入りをするまでには、2025年位かかります。少子化対策は、国を挙げて取り組まなくてはいけない緊急の課題です。
 もちろん、少子化対策は家族のあり方や保育所の充実等の生活環境設備等、社会政策として行政の果たす役割が重要ですが、それらを側面からバックアップするための税制面からの配慮が必要です。
 例えば、児童に対する税額控除方式の創設やフランスで第二次大戦の人口減少に対応するために導入された課税単位としてNN乗方式の導入を検討すべきでしょう。
【参 考】N分N乗方式
 課税単位を家族単位とし、家族の所得を家族の人員で分割し、その分割
後の所得に
累進税率を適用し、その税額を合計します。子どもが多いほ
ど税率が低くなり、税負担
が軽くなります。これを有効にするには、累
進税率の刻みを工夫する必要があります。
4.金融所得一体課税
 近年の金融バブルの崩壊等を見ても分かる通り、良くも悪くも経済の中で金融の果たす役割は地球規模で高まっています。しかし、税制面から見ると、こうした金融取引に対する課税は、目まぐるしい環境変化に対応できていません。
 サブプライム・ショックに端を発したアメリカ発金融危機は、行き過ぎた規制緩和がもたらした副産物と言えますが、ニューヨーク市場のダウ平均株価や東京証券取引所の株式市況を見ても、金融取引の活性化こそが経済活性化につながる時代に突入しています。
 今必要なのは、金融取引を活性化させる税制、言い換えると、金融取引・商品について差別をつけずに総合的に低税率で課税するという金融一体課税の考え方です。
 現在の所得税制では、所得の発生形態によって10種類の所得分類を行っています。金融一体課税を実行するためには、この所得10分類を整理・統合する必要があります。その他、金融所得間の損益通算や課税繰り延べも検討しなくてはいけません。平成20年度税制改正では、上場株式の譲渡損失と配当所得の損益通算が可能となる特例措置が創設されましたが、それだけでは充分とは言えません。例えば、預貯金の利子との損益通算ができると、投資家にとっては便利となります。
 経済活性化の観点から預貯金、株式、商品取引等の幅広い金融商品を対象にした課税方式に改め、金融所得を他の所得と分離して課税する金融一体課税を早期に実現すべきです。
5.納税者番号制度
 最近、わたくしたちの生活の中で各種カードが普及し、これに伴ってカード番号の利用が一般的になってきています。政府の方も各種番号制について検討を進めてきました。しかし、この制度は国民総背番号制につながるだけにプライバシー保護の点あるいは費用便益の点から、検討すべき課題が多いのも事実です。一方、行政の情報化というのは時代の要請でもあり、その導入について早急に考えるべきです。
 事実、納税者番号制度をめぐる環境は近年大きく変化してきました。19871月から社会保険庁による基礎年金番号制度が実施され、さらに2002年から住民票コードという番号を用いた住民基本台帳ネットワーク・システムが導入・実施されました。次の焦点としては、仮に納税者番号制度を導入するとした場合、既存の年金番号制度か住民基本台帳方式のどちらの利用が望ましいのかという点が問題になります。
 他の主要先進国の例を見ると、スウェーデンやデンマークなどは住民登録制度を利用しています。これは住民基本台帳に基づくだけに、国民総背番号と同じような個人情報制度で社会保障、税務、自動車登録など広範囲に利用されています。韓国やシンガポールもこの例に属しています。これに対し、アメリカやカナダでは社会保障または社会保険番号が用いられ、その導入後に納税者番号としても利用されるようになり、利用範囲は行政の各分野に及んでいます。さらに、第三のタイプとして、イタリアやオーストラリアのように納税者番号そのものが存在するケースもあります。税務のほか、医療や社会保障に関する業務にも用いられています。
 このように、方式の違いは別として主要先進国ではどこでも何らかの形で納税のための番号制度を採用しています。それに引きかえ、日本では役所のタテ割り行政の弊害で基礎年金番号と住民基本台帳番号(住基ネット)という同じような番号制度を2種類持っています。関係者は使用目的が違うからと言うかもしれませんが、国家的に見ると、屋上屋を重ねた行政の無駄の典型です。
 費用の点から見ると、自治省(現在は総務省)の試算では、住基ネットの場合、システム稼動までに要する費用として384億円、システム稼働後、毎年要する費用として198億円を計上しています。
 ですから、早急にどちらかに制度を統合して、国民が使いやすい、タテ割り行政を廃止した効率的なシステム作りが是非とも必要になります。現行の2制度を比較すると、年金番号の場合、未加入者や未成年者がもれてしまいます。番号制度としては、出生時に付番する住民基本台帳番号の方が精度が高いと言えましょう。
 今後、少子高齢化社会では、国民背番号制度は単なる課税目的だけでなく、社会福祉、年金、医療、少子化政策にも広く利用価値があります。給付付き税額控除の導入にも必要条件となります。また、金融サービスへの利用も可能となります。
 毎年、システムの運営費として数百億円もの金がかかるのですから、早急に効率的な納税者背番号制を導入して、プライバシー保護のための法整備を行うべきです。
【参 考】給付付き税額控除
  減税と給付を組み合わせて低所得者や子育て世帯などを支援する仕組み。
  所得が低く所得税(国税)や個人住民税(地方税)が免除されている世帯にはお金
 を給付し、一定額以上の所得税などが課されている世帯には、減税と給付を組み合わ
 せて支援します。減税は計算上の税額から一定額を差し引く税額控除方式を取ります。
 所得制限以上の中・高所得世帯は対象に入りません。
  いずれも税務署が所得や家族構成などを把握する必要がありますが、税務署は所得税
 を納めていない所得者(夫婦・子供人の世帯で年収325万円未満)の情報を持って
 いません。そこで、社会保険事務所や地方自治体から情報提供を受ける必要があります。
 さらに制度の公正な実行のためには、給付対象者の所得や保有資産を正確に把握する必
 要があります。
第三 相続税制について
1.相続税
 相続税は性格がわかりにくい税制です。なぜ、相続税をかけるのかという課税の根拠としては、第一には死亡した人の所得税の清算という理由があります。生前に所得税を完全に課税することは困難で、特に資産の含み益には課税できないため、死亡時に相続税で補完するという考え方です。第二は相続した人への所得税という趣旨があります。第三に富が集中することのないように相続税をかけて資産の再配分をするという趣旨があります。
 次に相続税のかけ方としては、遺産課税方式と遺産取得課税方式があります。前者は人が死亡した場合にその遺産を対象にして課税する方式であり、後者は人が相続によって取得した財産を対象として課税する制度です。日本の場合はどうかというと、まず相続人が法定相続分通りに遺産を取得したとして全体の相続額を計算し、それを実際の取得額に応じて按分するという遺産取得課税方式の変形方式(法定相続分課税方式)を採用しています。
 ちなみに外国では、アメリカ、イギリスが遺産課税方式、ドイツ、フランスは遺産取得課税方式を採っています。
 さて、民主党政権になって、同党の政策の税制項目の中に「相続税・贈与税改革の推進」があり、相続税の富の一部を社会に還元する考え方に立っ遺産課税方式への転換、中堅資産家層の育成に考慮しつつ相続税の課税ベース・税率を見直して税収を社会保障の財源に充てること、さらに平成22年度税制改正大綱には、「格差是正の観点から相続税の課税ベース、税率構造の見直しについて平成23年度改正を目指す」と記されています。
 相続税の課税状況の推移を見ると、ここ5年間位、課税価格、相続税額はあまり変わっていません。課税割合(何割の人が相続税を支払ったか)も平成16年以降42%と同じです。
 民主党政権は平等主義を掲げる美名の下、相続税改革に手を付けようとしていますが、国際的に見て相続税租税負担率は先進主要国とほぼ同一水準です。また、各国の相続税の現状は、大きな流れとして相続税負担を軽減・廃止していこうという共通した傾向があります。そして、各国の相続税の傾向の中心的根拠にあるものが、疑いもなく「営業用財産に対する相続税(生前贈与による贈与税を含む)」の負担軽減ということなのです。
 日本が社会主義政権なら別として、努力した者が報われる税制という民主主義の精神からいって相続税の課税強化は間違った道を歩もうとしていると言ってよいでしょう。
2.贈与税
 贈与税については、昨年の追加経済対策として、基礎控除(110万円)とは別枠で、子が親など(直系尊属)から住宅資金の贈与を受ける場合の非課税措置が平成22年度改正で実施されました。その内容は、非課税限度額(改正前500万円)が、
  @平成22年中に住宅資金の贈与を受けると1500万円
  A平成23年中に住宅資金の贈与を受けると1000万円
に引き上げられました。(ただし20歳以上で所得2000万円以下の者に限定)
 しかし、この措置はあくまでも時限的なもので、個人資産世代間移転という観点から見ると、極めて対象が限られています。このため、贈与税については、相続税の見直しと併せて包括的な見直しが必要となります。

3.相続時精算課税制度の拡充
 生前贈与をやりやすくして、高齢者の保有資産を次世代へ円滑に移転させるため、平成15年度税制改正で相続時精算課税制度が創設されました。この制度は、受贈者の選択により、生前贈与された財産について従来の贈与税よりも軽減・簡素化された贈与税を支払い、その後の相続時にその贈与財産と相続財産を合計した価額を基に計算した相続税額から、既に支払った贈与税額を控除することで、贈与税・相続税との間を精算できる仕組みです。この制度の適用対象となる贈与者は、65歳以上の親で、受贈者は20歳以上の子である推定相続人です。なお、住宅取得等のための資金の贈与を受ける場合には、65歳未満の親からの贈与であっても制度を利用できます。
 この制度は、中小企業者の事業承継対策として有効に活用されています。そうした実情から、この制度については非課税枠の更なる拡大と年齢制限65歳の60歳への引き下げを求めることとしています。

第四 事業承継税制について

 最近、先進各国の動向として、相続税負担を軽減・廃止していこうという共通の傾向があります。その各国の相続税の傾向の中心的根拠にあるのが、「営業用財産に対する相続税(生前贈与による贈与税を含む)」の負担軽減ということです。
 日本では中小企業が、企業の大半を占め、地域経済の活性化、雇用の確保等に大きく貢献しています。その中小企業が相続税の負担等により、事業を承継できなくなることは、日本経済にとっても大きな損失となります。
 欧米では、前述した「営業用財産に対する相続税の負担軽減」という考え方に基づいて、事業を相続する場合に事業用財産を一般財産と切り離して、非課税措置や大幅な控除といった課税軽減の特例措置がとられています。こうした実情から、法人会は長年に渡り「事業承継税制の確立」を提言しています。
 一方、政府は平成21年度税制改正で、事業の後継者を対象にした「非上場株式等に係る相続税の納税猶予制度」の創設により、軽減割合を従来の10%減額から80%納税猶予とする制度改正を行いました。それと同時に、生前贈与が可能となる制度を新たに創設しました。
 新しい制度を活用して自社株式を生前贈与すると、上限(発行済議決権株式の3分の2)はあるものの、株式の80%分の相続税が納税猶予となる。一見すると、中小企業が大喜びするような制度に思えますが、そうは問屋が卸しません。
 まず、この制度は欧米のように申請するとすぐに税控除や減税の恩恵が受けられるものではありません。日本の場合は納税猶予制度ですから、制度の恩恵を受けるまでは長い間、決められた厳しい要件を守っていかねばなりません。例えば、要件の1つとして、納税猶予の適用から5年間、雇用の8割(厚生年金、健保加入者ベースで、非正規を除く)を維持するというのがあります。現在の不安定な経済情勢の中で、5年間正社員を減らさないで経営できる中小企業は、一体、全国で何社あるでしょうか。もし、こうした要件が守れなかった場合、納税猶予はただちに停止され、相応の相続税あるいは贈与税に利子をつけて納税しなくてはいけません。
 適用される中小企業についても業種別に規模(資本金、従業員数等)に制約があり、資産管理会社は原則除外されます。そして、事業承継期間の最初の5年間は毎年1回、経済産業省、税務署への届出が必要です。その後は3年ごとに税務署へ届けなくてはいけません。そして、納税猶予となる株式は、国に担保として取られます。
 これでは、人の手足を縛って「さあ、泳げ」というようなものでしょう。事実、法人会が行ったアンケート調査でもこの制度に対する評判は悪く、否定的な回答が多いのです。
 以上のような点から、欧米なみの本格的な事業承継税制の確立が不可欠です。具体的には、「事業に資する相続については、事業従事を条件に他の一般財産と切り離して課税し、事業用資産、株式を軽減または控除する制度」を創設すべきでしょう。
 ところで欧米では、フランスが相続後5年以上の事業継続を条件に事業用資産の相続を一律75%軽減、ドイツは相続後5年間の事業継続を条件に225万ユーロ控除後、一律35%軽減、イギリスでは非上場会社の株式や個人事業主の事業用土地を100%軽減し、さらに会社が事業用に使っている個人所有の土地、建物、機械設備を50%軽減、また、アメリカでは2010年は遺産税ゼロ%(2011年からは変わる予定です)などの優遇措置をとっています。
 この他、親族外承継も重要な課題であり、税制面での措置を検討すべきです。

第五 消費税制について
1.消費税率引き上げの条件
2.滞納防止
 消費税は、言うまでもなく最終的には消費者が負担する税金で、事業者にとって消費税は預り金の性格を持っています。そこで滞納防止策として、中間申告やeTaxの普及等、執行面でより一層充実した対策をしなくてはいけません。
第六 地方税制の見直しについて
1.固定資産税の軽減
 固定資産税の土地の評価については、平成6年度に公示価格の7割評価にしたところから、全国的に見て地価の下落傾向が続いたのにもかかわらず、税負担が増加するという不合理な状態が続いています。
 土地の公示価格(時価)に対する固定資産税額14%の割合を示す実効税率は、商業地で見ると、1990年度の018から2001年度には06%に上昇しました。現在の負担調整が完了して、7割評価が完全に実施されると098%まで上昇することになります。
商業地においては、この固定資産税の他に原則として都市計画税(税率03%)が課税されるので、税負担感は一層強まるわけです。
 このため、土地評価については、利用価値に着目した収益還元方式に基づいて評価するよう求めます。また、小規模事業用宅地については、居住用宅地に設けられている軽減措置(6分の1または3分の1評価)に準じた措置を設ける必要があることを求めるものです。
 また、家屋の評価については、総務省は客観的な時価(処分価値)で評価するとしていますが、実際には処分価値がマイナスになっている中古家屋についても固定資産税が課せられています。そこで居住用については、家屋の経過年数を考慮した評価方法に改めるとともに、事業用については、土地とともに収益還元価格で評価するなどの工夫が必要になります。
 固定資産税の評価体系は極めて複雑であり、一般の人には分かりにくい仕組みになっています。行政の透明化および行政コスト削減の観点から、現在、国土交通省、総務省、国税庁が個別に行っている評価体制の一元化が必要です。
【参 考】収益還元価格
 収益還元方式とは、1つまたは複数の手法を利用して不動産が生み出すと期待される将来の収益を現在価値に置きかえて、不動産価値を求める方法のことを言います。
 ここでの「還元」とは収益を査定価値に置き換える過程を示します。こうした方法で導き出された価格が収益還元価格になります。
2.事業所税の廃止
 事業所税については、その課税対象が固定資産税と同じで、二重課税的な性格を持っています。また人口30万人以上の都市が課税対象になるので、市町村合併が行われた結果、思わぬうちに課税対象になることがあります。これでは、行財政改革の趣旨に反することになります。
3.申告納税制度の合理化
 最近の地方税制では、地方の独自性を強調する意味で、法定外目的税や事業税の外形標準課税への移行等が行われ、それに伴って地方税の課税、徴収も地方独自に行う事例が多く見受けられます。例えば、事業税については、これまで法人税処理に連動していたので、独自の税務調査は必要としていませんでした。しかし、外形標準課税では独自の税務調査が必要になります。
 このようなことは行政効率の点から見るとマイナスに作用し、企業の納税コストも高めることになります。現在、国税と地方税の課税対象を同じくする中小法人の事業税、法人・個人の道府県民税と市町村民税については、申告納税を一体化して、徴税で納税コストを合理化する必要があります。
 このような執行体制は、既に消費税と地方消費税について採用されているので、他の税目についても同様の措置をとる必要があります。
第七 環境税制について

 環境問題は21世紀の人類共通の課題であり、温暖化ガスの排出削減を義務づけた京都議定書等、各分野で様々な議論が行われています。通常の税の目的が公共サービスの財源確保にあり、公平・中立・簡素が大原則であるのに対して、環境税のユニークな点は、環境汚染物資に直接課税することにより、負荷を負わすことを目的としています。したがって、税制の設計に当たっては、いかに効率よく、公平に賦課するのかという観点が重要になります。
 具体的には、個人の消費活動や企業の生産活動が自然環境や居住環境等に悪影響を及ぼす場合、それにより生じるコストを製品価格に反映させることで、適正な経済負担を求めるという考え方があります。
 現在までのところ、わが国では、環境税導入に向けた議論が進められています。しかし、まだその方向性は固まらず、結論は出ていません。環境税については、従来の税制とは考え方が相当異なるので、内外の議論の進展を注視しながら、合意形成に向けての検討が必要になります。