平成24年度税制改正に関する提言 個別事項
財団法人全国法人会総連合
科目別の具体的意見
1.所得税関係
(1)所得税のあり方
  @基幹税としての財源調達機能を回復すべき
    所得税は国民がその所得に応じて負担するという税の基幹とも言うべき税目であるが、各種控除
   の拡大などにより空洞化が指摘されて久しい。
    また、グローバル競争や就業形態の多様化などの経済社会の構造変化などから、非納税者が増加
   する傾向もある。基幹税としての財源調達機能を回復するためにも、所得税・住民税は広く国民全体
   で負担していくものとすべきである。
  A個人住民税の均等割は、応益負担原則の観点から適正水準とすべき。
(2)各種控除制度の整理・統合
  平成23年度税制改正では、所得再分配機能強化の観点から、成年扶養控除、給与所得控除の上限設定
 など、増税方向での改正が予定されたが、本法案は未成立の状況である。
  各種控除は、社会構造の変化に対応した合理的なものとすべきであり、まずは、23年度改正案を白紙
 に戻し、累次の改正で複雑化している諸控除の整理・合理化を図るとの観点から見直しを優先すべきで
 ある。
(3)少子化対策
  少子化対策は、保育所の充実など、本来的には財政・行政面で総合的な施策を講じることが肝要であり
 、その一環として税制の果たす役割も大きい。子どもが多くなれば世帯の税負担が軽減されるような税額
 控除制度の創設や、フランス等で実施されているNN乗方式の導入なども検討課題であろう。
(4)金融所得一体課税
  所得税制は、現行の10種類に区分した所得類型を統合、簡素化することが望ましい。平成20年度税制
 改正における金融所得に対する損益通算の特例は、その第一歩と考えられるものの、小幅な改正で十分
 ではない。
  経済の活性化の観点からも幅広い金融商品を対象にした金融一体課税の制度拡充を求める。
2.法人税関係
(1)同族会社の留保金課税制度の廃止
  同族会社の留保金課税は、平成19年度税制改正で出資金1億円以下の会社がその適用対象から除外
 され、中小企業における同族会社の留保金課税は実質的に撤廃されたが、課税制度そのものは未だ存続
 している。
  個人所得税とのバランスを図るために設けられた本制度の意義は既に失われており、廃止を求める。
(2)「中小企業者に対する法人税率の特例」の適用範囲見直しは行うべきではない
  平成23年度税制改正大綱において検討事項とされた中小企業者に対する法人税率の特例(軽減税率)と
 租税特別措置の適用範囲の見直しについては、中小企業の活力増大と成長の促進に資するとの観点から、
 見直しは行うべきではないと考える。
3.相続税・贈与税関係
(1)相続税の課税強化は行うべきではない
   平成23年度税制改正では、格差是正の観点から、相続税の基礎控除額の引き下げ、最高税率の
  引き上げが盛り込まれたが、法案未成立のまま棚上げの状況にある。国際的にみても、わが国の相
  続税の租税負担率は主要各国とほぼ同一水準にあり、その課税強化は容認し得ない。
(2)贈与税は経済の活性化に資するよう見直すべき
  @贈与税の税率構造、基礎控除の見直し
    平成23年度税制改正で直系卑属と一般に分けた税率構造の見直しが行われることとなっていた
   が、法案は未成立の状況にある。
    個人資産の世代間移転を促進する観点からの改正であるが、その内容は限定的であり、税率構造
   や基礎控除の見直しなど贈与税のあり方まで踏み込んだ見直しが必要である。
  A相続時精算課税制度の拡充
    資産の世代間移転とその有効活用による経済の活性化に加え、事業承継にも資するとの観点から、
   平成23年度税制改正で受贈者に孫を加えること、贈与者の年齢を60歳以上に引き下げるなど、
   適用要件の見直しが行われたが、法案は未成立の状況にある。
    早期の法案成立を図るとともに、特別控除額を2,500万円から引き上げるなど、さらなる
   制度の拡充を求める。
4.消費税関係
(1)わが国の危機的な財政状況を考慮すると、消費税率の引き上げはやむを得ないが、行財政改革の徹底、歳出入の見直しが前提であり、かつその実施時期は景気への配慮が必要である。
(2)消費税を社会保障目的税とすることは慎重であるべき
   消費税を社会保障目的税とすることについては、税収の使途を特定の支出に限定することとなり、
  財政の硬直化を招く恐れがあり慎重に考えるべきである。
   しかしながら、現在、消費税の税収が実質的に年金など社会保障財源に充てられていることを考慮
  する必要がある。今後、消費税率を引き上げる際には、社会保障支出と負担の関連を明確にして国民
  の理解を得るべきである。
(3)当面は単一税率が望ましい
   消費税の税率は、事業者の事務負担、税制の簡素化、税務執行コストおよび税収確保などの観点から
  基本的には単一税率が望ましい。
   なお、インボイス導入の議論については、単一税率であれば、現行の「請求書等保存方式」で十分
  対応できるものと考える。
(4)消費税の滞納防止
   租税全体の滞納に占める消費税の割合は依然として高く、国民に消費税に対する不信感を与える一因
  ともなっている。本来、消費税は預り金的な性格を有する税であることから、その滞納発生の未然防止
  として、制度、執行面においてさらなる対策を講じる必要がある。
5.地方税関係
(1)固定資産税の抜本的見直しを求める
   固定資産税に対しては、長期的な地価の下落にも関わらず負担感が高いとの声が多い。評価方法
  および課税方式の抜本的見直しを求める。
   @宅地の評価は「収益還元価格」で評価すべき
   A居住用家屋の評価は経過年数に応じた評価方法に見直すべき
   B納税事務の負担軽減に鑑み、償却資産の評価は法人税の減価償却制度と連動した制度とすべき
   C国土交通省、総務省、国税庁がそれぞれの目的に応じて土地の評価を行っているが、行政の
    効率化の観点から評価体制を一元化すべき
(2)事業所税は二重課税であり、廃止を求める
   平成15年度税制改正において新増設分に対して課せられる事業所税
  は廃止されたが、「事業にかかる事業所税」は存続している。市町村合併
  の進行により課税主体が拡大するケースも目立つ。事業所税は固定資産
  税と二重課税的な性格を有することから廃止を求める。
(3)市町村民税の超過課税は課税の公平を欠くため解消すべきである
   地方税における市町村民税の超過課税は、個人ではなく主に法人を対象として課税されており、
  十分な説明もないまま恒久的に課税を実施している自治体もある。課税の公平を欠く安易な課税は
  行うべきでない。
(4)法人に対する安易な法定外目的税は課すべきでない
   法定外目的税は、環境対策の観点から導入されているケースも多いが、こうした独自課税の実施に
  あたっては、税の公平性・中立性に反することのないよう配慮するとともに、法人企業に対して安易
  な課税は行うべきではない。
6.その他
(1)配当に対する二重課税の排除
   配当については、現行の配当控除制度で法人税と所得税の二重課税の調整が行われているものの
  不十分であり、さらなる見直しを求める。
(2)電子申告について
   国税電子申告(eTax)の利用件数は、年々拡大してきているが、まだまだ利用率としては
  不十分であり、その普及に取り組んでいく必要がある。
   さらなる利用促進に向けて、制度の一層の利便性向上を図るとともに、地方税の電子申告(e LTAX)
  との一体化の検討、インセンティブとしての法人・個人に対する恒常的な税額控除制度の創設等の
  税制措置を求める。
個別法令・通達関係
T.法令関係
1.所得税関係
[土地・建物等の損益通算]
  (1)土地・建物等の譲渡により生じた譲渡損失の損益通算および繰越控除を認めること。
[不動産所得の負債利子の損益通算]
  (2)土地等に係る負債利子については、不動産所得の計算上生じた損失がある場合に、他の所得との
    損益通算が認められないこととなっているが、この取扱いはバブル期の措置として設けられたも
    のであり、また所得の計算上、本来認められるべきものであることから損益通算を復活すること。
[医療費控除]
  (3)医療費控除については、最近の医療費の実態に即して、最高限度額を300万円(現行200万円)
    に引き上げること。
[源泉納付]
  (4)源泉所得税の1月の納付期限については、年末調整事務や年末年始の休暇等の特殊事情、および
    週休二日制の普及を考慮し、「納期限の特例」適用者以外の源泉徴収義務者に対しても1月
    20日(現行1月10日)とすること。
[財産債務明細書]
  (5)財産債務明細書の提出を要する所得基準2,400万円は、昭和47年度税制改正以降相当期間
    を経過しているので、4,000万円に引き上げること。
2.法人税関係
[無形減価償却資産]
  (1)電算機のソフトウェアは無形減価償却資産として5年償却となっているが、技術革新の加速化を
    考慮し、期間を3年に短縮すること。
[少額減価償却資産]
  (2)少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例について、損金算入額の上限(合計300万円)
    を撤廃し、制度を恒久化すること。
[引当金の損金算入]
  (3)引当金について、次のとおり損金算入を認めること。
    @退職給与引当金は、将来確実に発生する債務を引き当てるものであることから、その繰入に
     ついて損金算入を認めること。
    A賞与引当金は、潜在的には各月に発生する未払い費用としての性格を有していることから、
     その繰入について損金算入を認めること。
[電話加入権の損金算入]
  (4)電話加入権については、自動車電話加入権や携帯電話加入権がすでに非償却資産から減価償却
    資産に変更されていることもあり、同様の扱いとすること。
[耐震補強等に係る工事を実施した場合の優遇措置]
  (5)建物等の構造物に対する耐震補強工事を実施した場合、特別償却または税額控除制度を設ける
    こと。
[法人税の延納]
  (6)不況時等における資金繰りに考慮し、昭和59年に財源対策等から廃止された法人税の延納制度
    を復活すること。
    なお、その際併せて利子税率を軽減すること。
[申告書の提出期限]
  (7)会社法上の諸手続きを含めた決算事務を2か月以内に完了することが困難であるため、法人税の
    確定申告書の提出期限を事業年度終了後3か月以内(現行2か月以内)とすること。
3.相続税・贈与税関係
[保険金・死亡退職金の非課税限度額]
  (1)保険金・死亡退職金の非課税限度額については、昭和63年度の改正で法定相続人一人当たり
    500万円とされたが、相当期間経過しているので、1,000万円に引き上げること。
[相続財産からの控除]
  (2)相続開始後に発生する相続に伴う費用(遺言執行費用、税理士・弁護士報酬等)は、相続税の
    課税財産から控除すること。
[被相続人の保証債務の弁済]
  (3)相続後の一定期間内に保証債務の履行があり、その求償権の行使が不能の場合、更正の請求が
    できるようにすること。
[贈与税の配偶者控除]
  (4)贈与税における居住用不動産の配偶者控除額2,000万円は、昭和63年以来据え置かれて
    いるので、3,000万円に引き上げること。
4.消費税関係
[消費税の確定申告書の提出期限]
  (1)消費税の確定申告書の提出期限は、前述の法人税の確定申告書の提出期限に合わせ、課税期間
    終了後3か月以内(現行2か月以内)とすること。
    なお、上記改正が行われるまでの間においても、法人税の申告期限の延長特例を受けている法人
    については、消費税についても申告期限の延長を認めること。
[消費税の届出書の提出期限]
  (2)消費税の各種届出書の提出は、消費税の申告・納付上、納税者にとって重要な事項であるが、
    その提出の失念により納税者が思わぬ不利益を被ることがあり、また、慎重な判断をする必要
    な場合もあることから、前課税期間の消費税の確定申告書の提出期限(現行は課税期間の開始
    日の前日)まで延長すること。
5.印紙税関係
[印紙税]
   印紙税については、電子取引の拡大や手形決済の省略など、取引慣行の変化に伴い、課税根拠が
  希薄化している。文書作成の有無による課税は公平性を欠くので廃止すること。
6.地方税関係
[固定資産税の免税点]
  (1)固定資産税の免税点については、平成3年以降改定がなく据え置かれているため、大幅に引き
    上げること。
[法人事業税]
  (2)法人事業税について次のとおり改正すること。
    @資本金1,000万円以上で都道府県以上に事業所を有する法人の法人事業税については、
     所得金額別の標準税率が適用されず一律に9.6%の税率となっているが、この制度を廃止
     すること。
    A二以上の地方自治体に事務所または事業所を有する法人の法人事業税・住民税の申告納税は、
     本店所在地において一括して行うことができるようにすること。
[個人住民税]
  (3)納入先市区町村が複数ある場合の個人住民税の特別徴収については、特別徴収義務者の事務の
    簡素化等に資するため、納入先市区町村別の明細書を添付することにより、当該事業所を所轄
    する市区町村において、一括納入ができるようにすること。
    また、併せて地方税の申告書・納付書の規格、様式の統一を図ること。
[欠損金繰戻し還付制度・延納制度]
  (4)住民税・事業税についても、法人税と同様に欠損金繰戻し還付制度を創設すること。また、地方
    税にも延納制度を設けること。
[償却資産]
  (5)固定資産税のうち、償却資産の評価にあたっては、納税者の事務負担軽減の観点から、法人税の
    減価償却資産と連動させ、賦課期日を各法人の事業年度末とすること。
7.その他
[更正請求]
  (1)更正請求をすることができる期間を1年以内から5年以内とすること。
U.通達関係
1.法人税関係
[修繕費]
  (1)資本的支出と修繕費の区分が不明確である場合の形式的区分基準について、修繕費としての
    認定の範囲を次のとおり改めること。
    @修理・改良等に要した金額が100万円(現行60万円)に満たない場合
    A修理・改良等に要した金額が取得価額のおおむね20%(現行10%)相当額以下である場合
[交際費]
  (2)社会慣習上その支出を避け難い慶弔費で、常識上相当と認められる金額1件当たり1万円程度)
    については、交際費課税の対象から除外すること
[借地権]
  (3)相当の地代の認定基準概ね6%程度については、地代の収益状況および金利水準の変化に応じて
    見直しを行い、当面3%程度に引き下げること。
2.相続税関係
[取引相場のない株式の評価]
  (1)類似業種比準方式の掛酌率を、中会社および大会社についても50%に引き下げること。
  (2)純資産価額方式による評価にあたっては、従業員退職金の期末要支給額の全額を負債として
    取り扱うこと。