平成25年度 税制改正に関する提言
財団法人全国法人会総連合
はじめに
 東日本大震災からの復興と並んで、我が国経済社会にとって二大命題となっていた社会保障と税の一体改革の関連法が成立した。曲折を経ながらも、これが民、自、公3党合意によってなされた意味は小さくない。法人会はかねてより「決められない政治」からの脱却、政治機能の回復を求めてきた。今回の政治決定がその第一歩となるよう期待したい。
 一体改革の目的は、先進国で最速のスピードで進む少子高齢化に対応する持続可能な社会保障制度の確立と、これも先進国で突出して悪化した財政の健全化を両立させることにある。そのカギを握る消費税は201510月までに段階的に10%へ引き上げられることになった。しかし、これによってこの2つの構造問題が一気に解決するわけでは決してない。
 社会保障面では依然としてばらまき色が払拭されておらず、創設される「社会保障制度改革国民会議」の場では「給付の重点化・効率化」の議論が不可欠となろう。財政健全化にしても、基礎的財政収支黒字化などの目標を見据えれば、まだ一里塚に過ぎない。にもかかわらず、早くも来年度予算編成に向け歳出圧力が高まっていることに強い懸念を覚えざるを得ない。これではいくら増税しても追いつくまい。
 今後、最も重要になるのは、社会保障を含めた聖域なき歳出の削減・抑制をいかに徹底するかであり、それを実行するための明確な手法と道筋を示すことである。同時に規制緩和などでどう着実な成長を確保するかが重要になる。それは税の自然増収と消費税増税による経済への負荷緩和にもつながると考えるからである。
 一方、日本経済は長引くデフレや原発事故がもたらした電力安定供給への不安、欧州債務危機による世界経済低迷などにより、依然として厳しい局面にある。その影響は地域経済と雇用の担い手である中小企業に最も鮮明に表れており、政府はこれらの問題に全力で対応する必要がある。消費税増税に当たっても、立場の弱い中小企業が適正に価格転嫁できるよう実効ある措置をとることが強く求められる。
 本提言はこうした現状認識と問題意識を前提にまとめたものである。
基本的な課題
T 社会保障と税の一体改革と今後のあり方

 遅きに失した感はあるが、とにもかくにも社会保障と税の一体改革が実現する運びとなった。我が国は少子高齢化が先進国で最速のスピードで進んでいる一方で、財政が先進国で突出して悪化している。これは社会保障の「給付」と「負担」のギャップ拡大を反映した図式であり、このままでは社会保障制度の維持も財政の健全化もできないことが誰の目にも明らかだった。
 成立した一体改革関連法は、消費税の税率を20144月に8%、1510月に10%へ引き上げることが柱となった。これによりギャップが完全に埋まるわけではないが、ギャップの拡大スピードに一定の歯止めをかけるという点で画期的であるといえよう。社会保障制度と財政が持続可能でなければ、将来不安から消費や企業マインドに悪影響を及ぼし、成長の下押し圧力となる懸念も指摘されてきた。そういう意味では、我が国経済にとっても今回の一体改革関連法成立はプラスに働くと受け止めたい。ただ、一体改革関連法には依然としてさまざまな問題が存在しており、これで持続可能な社会保障制度の確立と財政健全化が達成されるわけではない。肝心なのは今後の改革のあり方である。

1 社会保障制度のあり方に対する基本的考え方
 わが国の社会保障制度は先進国の中では「中福祉」に位置し、国民負担率は米国に次ぐ「低負担」である。この「給付」と「負担」のバランスが求められてきたわけだが、今回の消費税率引き上げは「負担」面で一定の改善がなされる。また、消費税は安定した税収が得られ、かつ「世代間・世代内の公平」という面でも社会保障財源としてふさわしいといえる。
 しかし、今後の社会保障給付は年金だけでなく、医療、介護分野でより急速に増大することが見込まれている。その財源を安易に公費負担に頼ることになれば、増税に際限がなくなる恐れがある。そうした事態を招かないためにも、これから最も重要になるのは給付の抑制である。それには過剰なばらまき的給付を排し、重点化・効率化を徹底するしかない。
 積み残された社会保障分野の諸課題については、有識者を交えた「社会保障制度改革国民会議」で1年以内に結論を出すとしているが、その際には給付の重点化・効率化を軸に据え、公的年金制度、医療保険制度、介護保険制度、少子化対策について、民、自、公で合意した内容を含め改めて議論する必要がある。また、国民会議においては透明性の確保と国民にわかりやすい議論が求められる。
 (1)今後の社会保障改革で最も重要なのは、給付の重点化・効率化である。その際には「自助」「公
    助」という基本的理念を基に役割分担を見直す必要がある。
 (2)年金については「支給開始年齢の引き上げ」「デフレ下で年金額を下げる仕組み」等、抜本的な
    施策の検討が必要である。全額税方式による最低保障年金は限られた税財源を考慮すれば非現実
    的と考える。
 (3)給付の急増が見込まれる医療分野については、診療報酬(本体)体系の抜本改革や高齢者の適正
    な窓口負担などが必要。また、薬価では後発医薬品(ジェネリック)の使用促進を図るべきであ
    る。
 (4)医療は成長分野としても位置付けられている。大胆な規制改革を行うことによって、着実に成長
    に結びつける必要がある。
 (5)介護保険の給付総額は導入時に比べて2倍以上となっている。真に介護が必要な者とそうでない
    者にメリハリをつけるなど、自立を促す観点から給付のあり方を見直すべきである。
 (6)生活保護給付は3兆円を超す規模に膨らんでいる。問題となっている不正受給の防止や給付水準
    のあり方など、制度の見直しと適正な運用が不可欠である。
 (7)企業の過度な保険料負担を抑え、経済成長を阻害しないような社会保障制度にすることが求めら
    れる。
2 消費税引き上げに伴う対応措置
 消費税は税率引き上げ時期が決まったものの、引き上げ実施にともなう円滑化対策や低所得者ほど負担感が重いとされるいわゆる逆進性への対策については、多くが今後の議論に委ねられている。これらは企業の経済活動や国民生活を左右する重要な課題である。また、消費税に対するアレルギー反応を弱めるか強めるかのカギを握るともみられ、政府には用意周到で緻密な対策が求められる。
 (1)景気への配慮が必要
    消費税は最も景気に中立といわれているが、全く影響がないわけではない。税率を引き上げる際
   には内外の経済環境を勘案し、景気への十分な配慮が必要である。

 (2)円滑な価格転嫁の実現
    消費税率の引き上げにあたっては、価格決定のプロセスにおいて立場の弱い中小企業が適正に価
   格転嫁できるよう、その実効を担保する確実な措置を講じるよう強く求める。下請法、独禁法など
   の法整備・監視はもちろんのこと、事業者間取引に外税表示を義務化することなども検討課題とな
   ろう。
 (3)当面は単一税率が望ましい
    逆進性対策の一つとして「複数税率」(軽減税率)の導入が検討事項としてあがっているが、事
   業者の事務負担、税制の簡素化、税務執行コストおよび税収確保などの観点から、当面(税率10
   程度までは)は単一税率が望ましい。
    また、インボイスの導入については、単一税率であれば現行の「請求書等保存方式」で十分対応
   できるものと考える。
 (4)簡素な給付措置の実施について
    政府は低所得者対策として「複数税率」と共に「給付付き税額控除」の導入を検討し、その導入
   が実現するまでの間は「簡素な給付措置」を実施するとしている。「簡素な給付措置」の実施にあ
   たっては、給付の対象や方法を十分考慮し、ばらまき政策とならないよう強く求める。
3 財政健全化に向けて
 消費税の引き上げが決まったことで、我が国は財政の健全化と持続可能な社会保障制度の両立に向け一歩踏み出したといえる。しかし、これによって財政運営戦略で定める財政健全化目標が着実に達成されるかというと、そうではない。国内総生産(GDP)比で195倍と、欧州債務危機諸国をはるかに上回る国と地方の長期債務残高は、消費税を10%に引き上げてもさらに悪化していく。仮に基礎的財政収支赤字の対GDP比半減という第1段階の目標をクリアしたとしても、債務残高対GDP比引き下げという第2段階の目標達成には険しい道のりが待っている。
 にもかかわらず、来年度予算編成では公共事業を中心に与野党から歳出圧力が高まっていることに深い憂慮の念を覚える。限界まで悪化した財政を健全化するには、歳入増を図ると同時に歳出の削減が不可欠である。それを怠れば増税に歯止めがかからなくなるか、財政が破綻するかのいずれかとなる。ここは改めて聖域なき歳出削減の徹底を求めておきたい。
 (1)財政健全化目標である@国・地方の基礎的財政収支赤字の対GDP比を2015年度半減、20年度黒字
    化A債務残高対GDP比を21年度から引き下げ−を着実に達成すべきである。
 (2)聖域なき歳出削減を徹底するには、@国債発行44兆円以下A基礎的財政収支対象経費の上限71
    円−という現在の中期財政フレームでは不十分である。社会保障を含めて各歳出分野別の削減目
    標を定めて達成までの道筋と工程表を明示することが必要である。
 (3)来年度予算編成では消費税引き上げがもたらす景気への影響緩和の対応や震災対応に名を借りた
    歳出圧力が目立つ。消費税の税収増を当て込んだ財政規律の緩みは厳に戒めねばならない。
 (4)消費税率引き上げにより金利上昇圧力が薄らいだとの見方があるが、財政健全化はまだ一里塚に
    過ぎず、国債利払い費が年間10兆円に達する状況では、依然として金利上昇に脆弱な体質である。
    欧州債務危機の中で、最も財政が健全なドイツ国債までが売られたことを考えれば、国債の信認
    の重要性を改めて認識する必要がある。
4 行政改革の徹底
 社会保障の安定財源を確保するためとはいえ、消費税の引き上げが国民に痛みを求める措置であることに変わりはない。地方を含めた政府、さらに立法府はそのことを深く認識し、「まず随より始めよ」の精神により自ら身を削る行政・議会の改革が何より重要である。
 しかしながら、改革の取組みは極めて不十分であり、消費税引き上げが決まった以上、国民が改革の先送りをもはや許さないことは明らかである。以下の諸施策について、直ちに期限を定めて改革を断行するよう求める。
 (1)国・地方における議員定数と歳費の削減
 (2)国・地方公務員の人員と人件費の削減
 (3)事業仕分け等による特別会計と独立行政法人の無駄の削減
 (4)民間活力を阻害する各種規制は大胆に改廃し、民間にできることは民間に任せ成長につなげる
5 今後の税制改革のあり方
 わが国の税制は先の抜本改革から20年以上が経過した。この間に少子高齢化や人口減少社会、グローバル競争とそれがもたらす所得格差など、経済社会の大きな構造変化が急進展した。社会保障と税の一体改革で消費税の引き上げが決まり、そうした問題に一定の対応は可能となろうが、所得、資産を含めた改革はこれからである。その際には国際間の経済取引の増大や多様化の観点、諸外国の租税政策等との国際的整合性、成長と雇用を創出するという視点等を踏まえることが求められる。そうした中で、後述する法人税率のさらなる引き下げや、所得税、相続税の見直しなども重要な課題である。
6 共通番号制度の導入について
 社会保障・税の共通番号制度は、税務における適正、円滑な執行への活用だけでなく、社会保障制度における個人情報を一元的に管理する上で有効な制度であり、国民の利便性の向上と行政の効率化に資することが期待される。今後、個人情報保護の徹底や国民への周知を図り、積極的な活用に向けて取り組んでいく必要がある。
 (1)制度の創設、維持にかかるコストの明確化
 (2)税務情報などプライバシー保護のための適切な法整備
 (3)税務面と社会保障分野への活用により、納税者の利便向上や社会保障給付の適正化につなげる
U 経済活性化と中小企業対策
 長引くデフレと欧州債務危機により世界経済が低迷するなか、政府は今年7月に「日本再生戦略」を閣議決定した。これには11の成長戦略の柱と38の重点施策、その改革工程表が示され、一体改革関連法にも盛り込まれた「名目3%、実質2%の成長」を目指すという。
 しかし、これまでも成長戦略が策定されたにもかかわらず、その成果は極めて暖味である。再生戦略を絵に描いた餅にしないためには、もはや実行以外にない。そして、その効果を明確にするには、民間企業では広く採用されている「PDCA(計画、実行、評価、改善)サイクル」の手法を取り入れ、政策遂行の過程と成果を数値化して検証することが求められる。
 また、悪化した財政の中では、いかに規制緩和によって経済の活力を引き出すかが重要である。特に、成長分野と位置付けられる医療や農業、再生エネルギー分野での大胆な規制改革が求められる。同時に原発事故がもたらした電力供給不安は早期に解消する必要がある。
 税制面では企業が将来に向けて活力を維持し、雇用確保などの社会的責任を果たすことができるような環境整備が必要であり、特に地域経済を担う中小企業の活性化に資する税制措置はかかせない。
1 法人税率の引き下げ
 法人実効税率は平成23年度税制改正により5%引き下げられ一歩前進したが、復興財源に充てる付加税が課されたため、実質的には3年後からの実施となる。さらに、5%引き下げがなされても、アジア、欧州各国では、近年、国際競争力の強化や外国資本の誘致などを目的に大幅な引き下げが行われており、わが国との税率格差は依然として大きい。
 また、法人税に社会保険料を加えた企業負担の国際比較では、わが国は必ずしも高くないとの指摘もあるが、年々、社会保険料が引き上げられていく状況を加味すると、企業の負担感は高まっている。こうした状況が続けば、国内企業の海外移転が促進され、雇用への悪影響、さらには経済全体の衰退につながる恐れがある。こうした観点から、法人の税負担は地方税を含めて大幅に軽減すべきである。
 (1)法人実効税率30%以下の早期実現
     わが国の立地条件や競争力強化の観点から、法人税率のさらなる引き下げを行い、早期に欧州、
    アジア主要国並みの30%以下の実効税率を実現するよう求める。
 (2)中小企業の軽減税率の15%本則化と適用所得金額の引き上げ
     中小法人に適用される軽減税率の特例15%を時限措置ではなく、本則化するよう求めるととも
    に、昭和56年以来、800万円以下に据え置かれている軽減税率の適用所得金額を、少なくとも
    1
600万円程度に引き上げるよう求める。
2 事業承継税制の拡充
 わが国企業の大多数を占める中小企業は、地域経済の活性化、雇用の確保などに大きく貢献しており、経済の根幹を支える重要な存在である。その中小企業が相続税の負担等により事業が承継できなくなることは、日本経済に大きな損失を与えるものである。
 平成21年度税制改正で創設された相続税、贈与税の納税猶予制度は、その適用要件が厳しく設定され、積極的な利用が困難との声が多い。
 社会保障と税の一体改革関連法ではその見直しが盛り込まれたが、見直しの際には中小企業の円滑な事業承継を図る観点から、中小企業の実情、実態に即した税制の構築が必要である。
 (1)相続税、贈与税の納税猶予制度について要件緩和と充実
   @適用申請時と適用後に求められる煩雑な各種手続きの簡素化と手続き窓口の一元化

   A5年間の雇用8割維持の要件緩和
   B対象会社の拡大
   C株式総数上限(3分の2)の撤廃と相続税の納税猶予制度割合(80%)の引き上げ
   D死亡時まで株式を所有しないと猶予税額が免除されない制度の見直し
 (2)親族外への事業承継に対する措置の創設
    親族外承継も重要な課題であり、円滑な承継を支援するとの観点から、所要の措置を講じるよう
   求める。
 (3)事業用資産を一般資産と切り離した本格的な事業承継税制の創設
    欧州主要国では相続税体系は多様ながら、税制上、事業承継を優先させる考え方では一致して
   おり、各種特例や優遇措置が整備されている。
    それに対して、わが国の納税猶予制度は、欧州主要国と比較すると限定的な措置にとどまって
   おり、欧州主要国並みの本格的な事業承継税制の創設が必要と考える。
    わが国においても、事業に資する相続については、事業従事を条件として他の一般財産と切り
   離して課税し、非上場株式を含む事業用資産を軽減あるいは控除する制度の創設を求める。  
3 中小企業の活性化に資する税制措置
 中小企業は、わが国経済の礎であり、また、地域経済の担い手である。その中小企業が時代や環境の変化、特にグローバル化の流れの中で、存在を確保し、社会経済への貢献を続けることができるような税制の確立が求められる。 
 ()中小企業の技術革新など経済活性化に資する以下の措置は本則化するよう求める。
   @中小企業投資促進税制
   A中小企業等基盤強化税制
   B少額減価償却資産の即時償却
 ()交際費課税の見直し
    交際費については、これまで数次にわたる見直し改正が行われてきたが、中小企業にとって交際
   費は顧客、取引先との関係維持や新規開拓に必要な支出であることから、さらに以下の見直しを求
   める。
    @損金不算入割合10%の撤廃
    A資本金規模に関わらず一定の損金算入を認める
    B社会慣習上その支出を避け難い慶弔費で、常識上相当と認められる金額(1件当たり1万円
     程度)については、交際費課税の対象から除外する
 ()役員給与の損金算入の拡充
   @役員給与は原則損金算入とすべき
     現行税制では、役員給与の損金算入の取り扱いが限定されており、特に報酬等の改定には厳し
    い制約が課せられている。役員給与は、本来、職務執行の対価であり、原則損金算入できるよう
    見直すべきである。
   A同族会社も利益連動給与の損金算入を認めるべき
     経営者の経営意欲を高め、企業活力を与える観点から、同族会社における役員の利益連動給与
    についても、一定要件のもと、損金処理を認めるべきである。
V 国と地方のあり方
 わが国の行財政システムは中央集権的であり、すでに行財政面の非効率化のみならず、地域経済の活性化をも阻害するに至っている。そういう意味で地方分権は必然的流れであるが、その際にはまず国と地方の役割分担を明確化し、税財政や行政のあり方を考えねばならない。
 国と地方は行政を担う「車の両輪」であり、一方だけに負担を偏らせることがあってはならない。国の財政が地方よりはるかに悪化している現状を考えれば、いかに地方が国依存から脱却し、自立・自助の体質をつくりあげるかが重要である。
 こうした中で、今回の消費税増税では地方消費税の引き上げ率が国のそれを上回った。地方自治体の首長、地方公務員、そして地方議員はこのことを深く認識し、自ら身を削って住民に理解を求める責務があると考える。
 (1)広域行政による効率化の観点から、道州制の導入について検討すべき。
     それに伴い、基礎自治体(人口30万人程度)の拡充を図るため、さらなる市町村合併を推進す
    ると共に、合併メリットを追求する必要がある。
 (2)行財政改革を行うために国で実施している「事業仕分け」の手法を、地方においても広く導入す
    べき。
 (3)地方公務員給与は、国家公務員給与と比べたラスパイレス指数が是正されつつあるものの、手当
    てなどを含めると依然としてその水準は高く、適正水準への是正が必要である。国家公務員の人
    件費は震災復興財源に充てるために期間限定で78%引き下げられたが、地方公務員人件費につ
    いても同様の引き下げを実施すべきである。
 (4)地方議会は、大胆にスリム化するとともに、より納税者の視点に立って行政に対するチェック機
    能を果たすべき。また、欧米に比べて格段に高い地方議員の報謝は大幅に削減すべきである。
 (5)教育委員会や人事委員会、選挙管理委員会など行政委員会の委員は、非常勤で委員会開催も月1
    〜3回と少ないにもかかわらず、多くの自治体で多額の月額報酬を得ている。日当制導入などが
    検討課題となろう。
 (6)地方の自立・自助を推進する観点から地方交付税を中心とした三位一体改革をさらに進めると同
    時に、適正な課税自主権を発揮すべき。
W 震災復興
 被災地の復旧・復興については、一定の措置が講じられたものの、復興は遅々として進んでいない。予算を迅速に執行するとともに、被災地における企業の定着、他地域からの企業誘致の促進、雇用確保の観点などから、原発の対応を含めて、引き続き適切な支援措置を講じるよう求める。
X その他
1 環境問題に対する税制上の対応
 地球温暖化対策の取り組みを進めるため、平成24年度税制改正において、石油石炭税の税率上乗せの形で「地球温暖化対策のための税」が導入された。
 しかしながら、環境問題に対する税制上の対応については、国内外の議論の動向、既存のエネルギー関係税制との調整を図りつつ、国・地方の役割等、幅広い観点から時間をかけて慎重に検討が行われる必要がある。
2 納税環境の整備
 行財政改革の推進と納税者の利便性向上、事務負担の軽減をはかるため、国税と課税基準を同じくする法人事業税、法人・個人の道府県民税、市町村民税の申告納税手続きにつき、地方消費税の執行と同様に、一層の合理化を図るよう求める。
3 租税教育の充実
 税は国や地方が国民に供与する公共サービスの対価であり、国民全体で等しく負担する義務がある。また、税をきちんと払い、税の使途についても厳しく監視する必要がある。しかしながら、税の意義や、税が果たす役割を必ずしも国民が十分に理解しているとは言えない。このため、学校教育はもとより、社会全体で租税教育に取り組み、納税意識の高揚を図っていくことが肝要である。
 法人会では、学童などを対象とする「租税教育活動」や「税に関する絵はがきコンクール」などを実施しており、今後もさらに積極的な取り組みを行うこととしている。
1.所得税関係
1)所得税のあり方
 @基幹税としての財源調達機能を回復すべき
   所得税は国民がその所得に応じて負担するという税の基幹とも言うべき税目であるが、各種控除の
  拡大などにより空洞化が指摘されて久しい。
   また、グローバル競争や就業形態の多様化などの経済社会の構造変化などから、非納税者が増加す
  る傾向もある。基幹税としての財源調達機能を回復するためにも、所得税・住民税は広く国民全体で
  負担していくものとすべきである。
 A最高税率を引き上げる方向にあるが、経済活力に悪影響を与えること、地方税を含めて国際的に高い
  税率水準にあることから、慎重に対応すべきである。。
 B各種控除制度の見直し
   各種控除は、社会構造の変化に対応した合理的なものに見直す必要がある。特に、人的控除につい
  ては累次の改正で複雑化しているため整理合理化を図るべきである。
 C個人住民税の均等割は、応益負担原則の観点から適正水準とすべき。
(2)少子化対策
   少子化対策は、保育所の充実など、本来的には財政・行政面で総合的な施策を講じることが肝要
  であり、その一環として税制の果たす役割も大きい。子どもが多くなれば世帯の税負担が軽減される
  ような税額控除制度の創設や、フランス等で実施されているN分N乗方式の導入なども検討課題であろ
  う。
(3)金融所得一体課税
   所得税制は、現行の10種類に区分した所得類型を統合、簡素化することが望ましい。平成20年度税
  制改正における金融所得に対する損益通算の特例は、その第一歩と考えられるものの、小幅な改正で
  十分ではない。
   経済の活性化の観点からも幅広い金融商品を対象にした金融一体課税の制度拡充を求める。
2.法人税関係
1)同族会社の留保金課税制度の廃止
  同族会社の留保金課税は、平成19年度税制改正で出資金1億円以下の会社がその適用対象から除外さ
 れ、中小企業における同族会社の留保金課税は実質的に撤廃されたが、課税制度そのものは未だ存続し
 ている。
  個人所得税とのバランスを図るために設けられた本制度の意義は既に失われており、廃止を求める。
2)「中小企業者に対する法人税率の特例」の適用範囲見直しは行うべきではない
  平成2324年度税制改正大綱において検討事項とされた中小企業者に対する法人税率の特例(軽減税
 率)と租税特別措置の適用範囲の見直しについては、中小企業の活力増大と成長の促進に資するとの観
 点から、見直しは行うべきではないと考える。
3.相続税・贈与税関係
1)相続税の課税強化は行うべきではない
  国際的にみても、わが国の相続税の租税負担率は主要各国とほぼ同一水準にあり、その課税強化は容
 認し得ない。相続税の基礎控除引き下げ、最高税率の引き上げは行うべきではない。
2)贈与税は経済の活性化に資するよう見直すべき
 @贈与税の税率構造、基礎控除の見直し
   個人資産の世代間移転を促進する観点から、税率構造や基礎控除の見直しなど贈与税のあり方まで
  踏み込んだ見直しが必要である。
 A相続時精算課税制度の拡充
   資産の世代間移転とその有効活用による経済の活性化に加え、事業承継にも資するとの観点から、
  制度のさらなる拡充を行うよう求める。
  ・受贈者に孫を加える
  ・贈与者の年齢を60歳以上に引き下げる
  ・特別控除額を2500万円から引き上げる
4 消費税関係
1)消費税の滞納防止
   租税全体の滞納に占める消費税の割合は依然として高く、国民に消費税に対する不信感を与える一因
  ともなっている。本来、消費税は預り金的な性格を有する税であることから、今後の消費税率引き上げ
  を考慮すると、その滞納防止に向けて、制度、執行面においてさらなる対策を講じる必要がある。
5 地方税関係
1)固定資産税の抜本的見直しを求める
  固定資産税に対しては、長期的な地価の下落にも関わらず負担感が高いとの声が多い。評価方法およ
 び課税方式の抜本的見直しを求める。
  @宅地の評価は「収益還元価格」で評価すべき
  A居住用家屋の評価は経過年数に応じた評価方法に見直すべき
  B納税事務の負担軽減に鑑み、償却資産の評価は法人税の減価償却制度と連動した制度とすべき。
   また、将来的には償却資産に対する課税廃止も検討すべき。
  C国土交通省、総務省、国税庁がそれぞれの目的に応じて土地の評価を行っているが、行政の効率化
   の観点から評価体制は一元化すべき
2)事業所税は二重課税であり、廃止を求める
  市町村合併の進行により課税主体が拡大するケースも目立つ。事業所税は固定資産税と二重課税的な
 性格を有することから廃止を求める。
3)市町村民税の超過課税は課税の公平を欠くため解消すべきである
  地方税における市町村民税の超過課税は、個人ではなく主に法人を対象として課税されており、十分
 な説明もないまま恒久的に課税を実施している自治体もある。課税の公平を欠く安易な課税は行うべき
 でない。
4)法人に対する安易な法定外目的税は課すべきでない
  法定外目的税は、環境対策の観点から導入されているケースも多いが、こうした独自課税の実施にあ
 たっては、税の公平性・中立性に反することのないよう配慮するとともに、法人企業に対して安易な課
 税は行うべきではない。
6 その他
1)配当に対する二重課税の排除
  配当については、現行の配当控除制度で法人税と所得税の二重課税の調整が行われているものの不十
 分であり、さらなる見直しを求める。
 
2)電子申告について
  国税電子申告(eTax)の利用件数は、年々拡大してきているが、まだまだ利用率としては不十分で
 あり、その普及に取り組んでいく必要がある。
  さらなる利用促進に向けて、制度の一層の利便性向上を図るとともに、地方税の電子申告(eLTAX)と
 の一体化の検討、インセンティブとしての法人・個人に対する恒常的な税額控除制度の創設等の税制措
 置を求める。

<平成25年度税制改正に関するスローガン>
・待ったなし。国・地方とも聖域なき行財政改革の断行を!
・活力ある経済社会の実現を目指し、抜本的な税制改革を!
・予算の迅速な執行など、万全な体制により被災地の早期復興を!
・所得税は広く薄く負担を求め、努力した人が報われる税制の構築を!
・わが国企業の国際競争力確保のためにも、さらなる法人税率の引き下げを!
・地域の活性化・雇用確保に資するためにも、欧米並みの本格的な事業承継税制を!
・増税だけに頼るのではなく、徹底した歳出削減の実施を!
・地方分権の推進のため、三位一体改革の更なる徹底を!
・年金・医療・介護制度について改革を断行し、持続可能な社会保障制度の確立を!