平成27年度 税制改正に関する提言
公益財団法人全国法人会総連合
はじめに
 長引くデフレからの脱却と強い日本経済の再生を目指す安倍晋三政権による経済政策「アベノミクス」が一定の効果をあげ、景気は回復基調にある。肝心なことはこれをどう持続的成長につなげるかであり、まだまだ課題は山積している。
 円安・株高をもたらした金融の「異次元緩和」は実体経済へ好影響を及ぼし、物価は着実に上昇傾向を示している。本年4月の消費税引き上げも景気への悪影響はほぼ一時的にとどまり、価格転嫁も比較的スムースに行われたといえよう。
 ただ、異次元緩和による効果は一段落しており、今後は経済の自律的な好循環構造を構築することが課題になる。それにはようやく始まった賃金上昇の持続や個人消費、設備投資の拡大が必要であり、それらを後押しする実効性ある成長戦略が何より重要である。
 政府は法人実効税率を来年度から数年で20%台に引き下げる方針を示している。まずはこれを着実に実行する必要がある。そして農業や医療、雇用分野などで打ち出した規制緩和策では、改革に値するような制度設計を行うことが求められる。
 また、国家的課題である持続可能な社会保障制度の確立と財政健全化の両立では、2015年度の基礎的財政収支赤字半減という第一段階の目標達成は可能になったものの、20年度の黒字化目標に向けての道筋は描かれていない。歳出・歳入一体で取り組む明確な改革工程を示すことが不可欠である。
 日本経済を取り巻く環境は中国経済の減速や続発する地政学リスクなど、依然として不透明感が拭えない。そうした中で地域経済と雇用の担い手である中小企業には、アベノミクス効果が十分に浸透していないうえ、エネルギーコストの上昇なども重荷になっており、さらなるきめ細かな対策が必要である。
基本的な課題
T 社会保障と税の一体改革と今後のあり方

 社会保障と税の一体改革は、本年4月に消費税が8%に引き上げられるなど実行段階に入った。我が国財政を先進国で突出して悪化させた最大の要因が、社会保障の「給付」と「負担」のギャップ拡大にあることは論をまたない。換言すれば、持続可能な社会保障制度の確立と財政健全化は表裏一体の問題であり、今回の消費税引き上げは、このギャップ縮小に一定の意味を持つことになろう。
 ただ、依然としてギャップは途方もなく大きいうえ、国の社会保障費は今後も毎年、1兆円ずつ増えることが見込まれている。少子高齢化が先進国で最速のスピードで進む我が国にとって、この問題に対応するのは容易でない。しかし、持続可能な社会保障制度の確立と財政健全化を両立させなければ、国民の間に将来不安が醸成され日本経済にも多大な悪影響をもたらす。
 こうした事態を回避するには、まず、重点化・効率化により「給付」を可能な限り抑制し、同時に適正な「負担」を確保するしか方法はない。政府は15年   10月に消費税をさらに10%へ引き上げる予定だが、本年4月の引き上げ同様、経済の動向に配慮しつつ着実に実行することが重要になる。そして、中長期の「給付」と「負担」のあり方についても、合わせて議論していかねばならない。

1 社会保障制度のあり方に対する基本的考え方
 持続可能な社会保障制度を構築するには、「中福祉」「低負担」といわれるアンバランスな構造の是正が欠かせない。しかし、今後の社会保障給付は高齢化社会の急進展で急速な増大が不可避とされる。とくに、年金受給年齢に達した団塊の世代が数年後に医療、介護分野で給付を受ける中心的世代になることを考えれば、社会保障制度の改革は急を要する。
 改革に当たっては、「重点化・効率化」によっていかに給付を抑制するかが何より重要である。その際には「自助」「公助」の役割とその範囲を改めて見直すことが求められる。給付財源を公的負担に頼ることになれば、消費税などをいくら増税しても間に合わないからだ。
 社会保障と税の一体改革では、「社会保障制度改革国民会議」がその土台作りを委ねられた。しかし、年金、医療、介護、少子化対策いずれの分野においても改革案は十分ではなかった。“ポスト改革国民会議”として新設された「社会保障制度改革推進会議」では、一体改革の進捗状況を厳しく点検すると同時に、10年後を見据えた抜本的な改革のあり方を示すよう求めたい。
 (1)年金については、「マクロ経済スライドの厳格な適用」「支給開始年齢の引き上
   げ」「高所得者の年金給付の削減」等、抜本的な施策を実施する。
 (2)医療については、成長分野と位置付け、大胆な規制改革を行う必要がある。また、
   給付の急増を抑制するために診療報酬(本体)体系を見直すとともに、後発医薬品
   (ジェネリック)の使用促進を強化する。
 (3)介護保険については、制度の持続性を高めるために、真に介護が必要な者とそう
   でない者とにメリハリをつけ、給付のあり方を見直すべきである。
 (4)生活保護については、給付水準のあり方などを見直すとともに、不正受給の防止
   などさらなる厳格な運用が不可欠である。
 (5)少子化対策では、現金給付より保育所の整備など現物給付に重点を置いた方が効
   果的である。
 (6)企業の過度な保険料負担を抑え、経済成長を阻害しないような社会保障制度の確
   立が求められる。
2 消費税率引き上げに伴う対応措置
 消費税率10%への引き上げに当たっては、景気に十分な配慮が必要なほか、よりきめ細かな価格転嫁対策が求められる。とくに中小企業は価格決定プロセスにおいて立場が弱く、実際、各種調査でも価格転嫁が完全ではないとの結果が出ていることに留意すべきである。
 また、政府・与党では今年末の来年度税制改正に向けて軽減税率導入に関する議論のとりまとめ作業を行っているが、以下に示した理由などから税率10%段階での導入は必要なく、低所得者対策は現行の「簡素な給付措置」の見直しで対応するのが適当である。

 (1)消費税率のさらなる引き上げに対応するため、現在施行されている「消費税転嫁
   対策特別措置法」の効果等を検証し、中小企業が適正に価格転嫁できるよう、さら
   に実効性の高い対策をとるべきである。

 (2)事業者の事務負担、税制の簡素化、税務執行コストおよび税収確保などの観点か
   ら、当面( 税率10%程度までは )は単一税率が望ましい。

    また、インボイスについては、単一税率であれば現行の「請求書等保存方式」で
   十分対応できるものと考えるので、導入の必要はない。

 (3)税の滞納全体に占める消費税の割合は依然として高く、国民に消費税に対する不
   信感を与える一因ともなっている。本来、消費税は預り金的な性格を有する税であ
   ることから、消費税率のさらなる引き上げを考慮すると、その滞納防止に向けて、
   制度、執行面においてより実効性のある対策を講じる必要がある。

3 財政健全化に向けて
 先進国の中で突出して悪化している財政の健全化は、アベノミクスによるデフレ脱却と両立させることが極めて重要である。国債の信認が失われれば、長期金利の急上昇などによりアベノミクスはもとより、日本の経済、財政自体が危機に瀕してしまうからである。
 我が国は@2015年度に国・地方を含めた基礎的財政収支赤字の対GDP比半減A2020年度に黒字化、長期債務残高対GDP比の安定的引き下げ――という財政健全化目標を掲げている。これは国際公約でもあり、目標を着実に達成することが極めて重要である。
 しかし、内閣府が本年7月に示した「中長期の経済財政に関する試算」によると、15年度の赤字半減は達成可能としているが、20年度には消費税率10%への引き上げと高い成長率を前提とした楽観的なシナリオでも、GDP比で  1.8%、11兆円の赤字が残る。
 これに対し、安倍政権の「中期財政計画」は20年度黒字化への道筋を示しておらず、その策定は15年夏以降に先送りした格好になっている。来年度予算の概算要求基準(シーリング)でも、国債の新規発行を前年度以下に抑制するとしただけで、歳出上限額の提示さえ2年連続で見送った。
 先進各国はリーマンショックで悪化した財政の健全化を法律で規定するなど、厳しい財政規律の下で急速に進めており、ドイツはすでに財政収支を黒字化している。我が国も早急に歳出・歳入両面からの改革に具体的な数値目標を設定して取り組まないと、20年度の黒字化は達成できないと考える。
 (1)財政健全化の達成は税の自然増収や増税のみに頼るのではなく、聖域なき歳出
   削減が不可欠である。その際には社会保障をはじめとした各歳出分野に削減目標
   を定め、その達成に必要な具体的方策と工程表を明示して着実に実行することを
   求める。
 (2)消費税率のさらなる引き上げに当たっては経済への負荷を和らげる財政措置も
   必要になろうが、財政健全化の阻害要因とならないよう十分注意すべきである。
 (3)国債の信認が揺らいだ場合、金利の急上昇など金融資本市場に多大な影響を与
   え、成長を阻害することが考えられる。市場の動向を踏まえた細心の財政運営が
   求められる。
4 行政改革の徹底
 社会保障と税の一体改革により消費税が段階的に引き上げられる。社会保障の安定財源確保と財政健全化のためには極めて重要だが、その前提に「行革の徹底」があったことを改めて想起する必要がある。増税は国民に痛みを求めるわけで、その理解を得るには地方を含めた政府、議会が「まず隗より始めよ」の精神に基づき自ら身を削らなければならない。
 しかし、衆議院の議員定数削減が小手先の対応に終始しているのをはじめ、公務員改革でも本気度が不足している。また、特別会計と独立行政法人に対する改革熱も冷めたように見える。財政健全化と同様、行政改革も直ちに明確な期限と数値目標を定めて断行するよう求める。
 (1)国・地方における議員定数の削減、歳費の抑制。
 (2)国・地方公務員の人員削減、能力を重視した賃金体系による人件費の抑制。
 (3)特別会計と独立行政法人の無駄の削減。
 (4)民間にできることは民間に任せるなど、積極的な民間活力導入を行って成長につな
   げる。
5 共通番号制度について
 マイナンバーの運用に当たっては、国民の利便性を高めるとともに、制度内容を国民に周知し、定着に向けて取り組んでいく必要がある。その際には個人情報の漏洩、第三者の悪用を防ぐためのプライバシー保護など制度の適切な運用が担保される措置を講じるとともに、コスト意識をもつことも重要である。
 また、社会保障と税、災害対策となっている利用範囲をどこまで広げるかは今後の重要な課題であり、広範な国民的議論が必要である。
6 今後の税制改革のあり方
 今後の税制改革に当たっては、@国際間の経済取引の増大や多様化、諸外国の租税政策等との国際的整合性A経済の持続的成長と雇用の創出B少子高齢化や人口減少社会の急進展Cグローバル競争とそれがもたらす所得格差など、経済社会の大きな構造変化―などにどう対応するかという視点等を踏まえ、税制全体を抜本的に見直していくことが重要な課題である。
U 経済活性化と中小企業対策
 アベノミクスが一定の効果をあげ始めた。円安・株高の定着、3大都市圏の地価の底打ち、政府の異例ともいうべき要請に応えた産業界の賃上げ、そしてこれらを背景とした物価上昇傾向の鮮明化がその証左であろう。
 しかし、強い日本経済の再生を成し遂げるには、これを技術革新や設備投資、個人消費の拡大という実体経済に結びつけ、持続的な成長サイクルを構築することが不可欠である。そのカギを握るのはアベノミクスの開始当初から指摘されているように実効性ある成長戦略であり、それなしには「経済低迷下の物価上昇」という危惧すべき事態にも陥りかねない。
 政府は、今年6月に新たな成長戦略を発表した。懸案となっていた法人実効税率では、来年度から数年間で20%台に引き下げる方針を示した。その代替財源については結論を今年末まで先送りしたが、引き下げを明確に打ち出したことは大きな前進といえる。また、地域経済を担う中小企業に対しても成長を促すさらなる実効性ある税制措置が必要である。
 成長戦略ではいわゆる“岩盤規制”の改革にも一歩踏み込んだ。具体的には、@労働分野では年収1,000万円以上の専門職について労働時間ではなく成果で評価する方式を導入するA医療分野では患者の申し出制により先端医療などで混合診療を拡大するB農業分野ではJA全農の株式会社化などの農協改革にも乗り出す―などが盛り込まれている。ただ、これらの規制緩和の実効性を確保するには今後の制度設計が重要な意味を持つといえよう。
 また、成長戦略をただのお題目に終わらせないためには、政策の進捗状況と効果を検証する「PDCA(計画、実行、評価、改善)」サイクルのような仕組みが不可欠であり、その作業は民間有識者もメンバーとなっている経済財政諮問会議の場で行うのが望ましい。そして検証結果を定期的に国民の前に明らかにし、さらなる成長戦略につなげねばならない。
1 法人税率の引き下げ
 法人実効税率は復興特別法人税が1年前倒しで廃止され、税率35.64%に引き下げられた。しかし、近年、国際競争力の強化や外国資本の誘致などを目的に大幅な引き下げが行われているアジア、欧州各国との税率格差は依然として大きい。
 さらに、法人税に社会保険料を加えた企業負担の国際比較では、我が国は必ずしも高くないとの指摘があるものの、年々、社会保険料が引き上げられていく状況を加味すると、企業の負担感は高まっている。
 こうした状況が続けば、国内企業の海外移転が加速し、雇用への悪影響、さらには経済全体の衰退につながる恐れがある。これらの観点から、法人の税負担は地方税を含めて大幅に軽減すべきであり、政府が示した来年度からの法人実効税率引き下げは着実に実行すべきである。
 また、税率引き下げの代替財源については、財政健全化目標との関係なども踏まえれば恒久財源の確保を原則とすべきで、具体的財源は税制全般の改革の中で検討されるのが望ましい。
 (1)法人実効税率20%台の実現
     我が国の立地条件や競争力強化などの観点から、法人税率のさらなる引き下げ
    を行い、早期に欧州、アジア主要国並みの20%台の実効税率を実現するよう求
    める。
 (2)代替財源として課税ベースを拡大するに当たっては、中小企業に十分配慮すべき
   である。
    @租税特別措置については、政策目的を達したものや適用件数の少ないものは廃
     止を含めて整理合理化を行う必要はあるが、中小企業向けの措置については本
     則化すべきである。
    A地方税については、応益課税の原則を考慮すべきではあるが、中小企業は経営
     基盤が弱く、担税力が低いこと等から、外形標準課税の対象範囲を拡大すべき
     ではない。

    B特定同族会社の内部留保に対する留保金課税について、適用対象の拡大が検討
     されているが、「資金調達の困難性」など中小企業の厳しい実情を踏まえ、範
     囲を拡大すべきではない。
    C中小企業の活力増大と成長の促進に資する観点から、「中小企業者に対する法
     人税率の特例(軽減税率)と租税特別措置」の適用範囲の見直しは行うべきで
     はない。
2 中小企業の活性化に資する税制措置
 中小企業は、我が国経済の礎であり、また、地域経済の担い手である。その中小企業が時代や環境の変化、特にグローバル化の流れの中で存在感を確保し、経済社会への貢献を続けることができるような税制の確立が求められる。
 (1)中小企業の軽減税率の15%本則化と適用所得金額の引き上げ
     中小法人に適用される軽減税率の特例15%を時限措置(平成27年3月31
    日まで)ではなく、本則化するよう求める。なお、直ちに本則化することが困難
    な場合は、適用期限を延長すること。
     また、昭和56年以来、800万円以下に据え置かれている軽減税率の適用所
    得金額を、少なくとも1,600万円程度に引き上げるよう求める。
 (2)中小企業の技術革新など経済活性化に資する措置は、以下の通り制度を拡充する
   とともに本則化することを求める。
    @中小企業投資促進税制については、対象設備を拡充したうえ、「中古設備」を
     含める。
    A少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例については、損金算入額の上限
    (合計300万円)を撤廃する。
3 事業承継税制の拡充
 我が国企業の大半を占める中小企業は、地域経済の活性化、雇用の確保などに大きく貢献しており、経済の根幹を支える重要な存在である。その中小企業が相続税の負担等により事業が承継できなくなることは、日本経済に大きな損失を与えるものである。
 平成25年度税制改正において、納税猶予制度の要件緩和や手続きの簡素化が図られるなど大幅な見直しが行われた。しかし、中小企業が円滑な事業承継を行うにはまだ不十分であることから、さらに以下の点について見直しを求める。
 (1)相続税、贈与税の納税猶予制度について要件緩和と充実
   @株式総数上限(3分の2)の撤廃と相続税の納税猶予割合(80%)を100%
    に引き上げ。
   A死亡時まで株式を所有しないと猶予税額が免除されない制度を、5年経過時点で
    免除する制度に改める。
   B対象会社規模を拡大する。
 (2)親族外への事業承継に対する措置の充実
     親族外承継も重要な課題であり、円滑な承継を支援するとの観点から、所要の
    措置を講じる。
 (3)事業用資産を一般資産と切り離した本格的な事業承継税制の創設
     我が国の納税猶予制度は、欧州主要国と比較すると限定的な措置にとどまって
    おり、欧州主要国並みの本格的な事業承継税制が必要である。とくに、事業に資
    する相続については、事業従事を条件として他の一般財産と切り離し、非上場株
    式を含めて事業用資産への課税を軽減あるいは控除する制度の創設を求める。
V 国と地方のあり方
 地方を含めた我が国行財政システムの硬直性是正や地域活性化の観点から地方分権が叫ばれて久しいが、具体的議論は依然として深化していない。国と地方の役割分担とそれに対応する行財政のあり方を明確化させる分権の本質的議論が行われていないからである。
 地方分権は権限と責任が国から移行することを意味する。従って地方は国依存から脱却し自立・自助の体質を構築することが不可欠となる。しかし、例えば財政状況をみると、地方の基礎的財政収支が黒字なのに対し、国は途方もない赤字を抱えているにもかかわらず、地方交付税を加算していた。しかも、地方交付税は地方公務員の高給与や高額の議員報酬の財源に充てられている側面もある。
 こうした中で、政府は地方活性化を重要課題として位置付けアベノミクス効果を全国に波及させる取り組みに乗り出すという。それぞれの地方の特色と強みを生かした活性化という理念に異論はないが、一方ではそれが新たな歳出圧力を生むとの懸念も指摘されている。地方活性化は安易に国の財政支援に頼ることなく、いかに地方独自の知恵を絞るかが重要である。
 また、地方行政に必要な安定的な財源の確保や行政改革についても、自立に向けて自らの責任で政策を企画・立案し実行していくことが求められる。
 (1)広域行政による効率化の観点から道州制の導入について検討すべき。それに伴い、
   基礎自治体(人口30万人程度)の拡充を図るため、さらなる市町村合併を推進す
   るとともに、議員定数削減や行政のスリム化などの合併メリットを追求する必要が
   ある。
 (2)地方においても、それぞれ行財政改革を行うために、民間のチェック機能を活か
   した「事業仕分け」のような手法を導入すべきである。
 (3)地方公務員給与は、国家公務員給与と比べたラスパイレス指数(全国平均ベース)
   が是正されつつあるものの、依然としてその水準は高く、適正水準に是正する必要
   がある。とくに、国家公務員に準拠するだけでなく、地域の民間企業の実態に準拠
   した給与体系に見直すことが重要である。
 (4)地方議会は大胆にスリム化するとともに、より納税者の視点に立って行政に対す
   るチェック機能を果たすべき。また、高すぎる議員報酬の一層の削減と政務活動費
   の適正化を求める。行政委員会委員の報酬についても日当
制を広く導入するなどし
   て見直すべきである。
W 震災復興
 被災地の復興の遅れが依然として改善されていない。復興事業に当たっては、予算を適正かつ迅速に執行するとともに、原発事故への対応を含めて引き続き、適切な支援を行う必要がある。また、被災地における企業の定着、雇用確保を図る観点などから、実効性のある措置を講じるよう求める。
X その他
1 納税環境の整備
 行財政改革の推進と納税者の利便性向上、事務負担の軽減を図るため、国税と課税基準を同じくする法人事業税、法人・個人の道府県民税、市町村民税の申告納税手続きについては、地方消費税の執行と同様に、一層の合理化を図るよう求める。
2 租税教育の充実
 税は国や地方が国民に供与する公共サービスの対価であり、国民全体で等しく負担する義務がある。また、税を適正に納め、税の使途についても厳しく監視する必要がある。しかしながら、税の意義や、税が果たす役割を必ずしも国民が十分に理解しているとはいえない。このため、学校教育はもとより、社会全体で租税教育に取り組み、納税意識の向上を図っていくことが必要である。
税目別の具体的課題
1 法人税関係
 (1)役員給与の損金算入の拡充
   @役員給与は原則損金算入とすべき
     現行制度では、役員給与の損金算入の取り扱いが限定されており、特に報酬等
    の改定には厳しい制約が課せられている。役員給与は、本来、職務執行の対価で
    あり、原則損金算入できるよう見直すべきである。
   A同族会社も利益連動給与の損金算入を認めるべき
     経営者の経営意欲を高め、企業に活力を与える観点から、同族会社における役
    員の利益連動給与についても、一定の要件のもと、損金処理を認めるべきである。
2 所得税関係
 (1)所得税のあり方
   @基幹税としての財源調達機能の回復
     所得税は国民がその所得に応じて負担するという税の基幹ともいうべき税目で
    あるが、各種控除の拡大などにより空洞化が指摘されて久しい。
     また、グローバル競争や就業形態の多様化などの経済社会の構造変化などから、
    非納税者が増加する傾向もある。基幹税としての財源調達機能を回復するために
    も、所得税・住民税は広く国民全体で負担していくものとすべきである。
   A各種控除制度の見直し
     各種控除は、社会構造変化に対応して合理的なものに見直す必要がある。特に、
    人的控除については累次の改正で複雑化しているため整理・合理化を図るべきで
    ある。なお、女性の社会進出に向けて「配偶者控除」のあり方について議論され
    ているが、税制だけでなく社会保障制度の見直しなど多角的な視点から検討する
    必要があり、拙速な見直しは避けるべきである。
   B個人住民税の均等割は、応益負担原則の観点から適正水準とすべき。
 (2)少子化対策
   少子化対策は、保育所の充実など本来的には財政・行政面で総合的な施策を講じる
  ことが肝要であり、税制上の支援措置はその一環として検討すべきである。
3 相続税・贈与税関係
 (1)相続税の負担率はすでに先進主要国並みであることから、これ以上の課税強化は
   行うべきではない。
 (2)贈与税は経済の活性化に資するよう見直す。
   @贈与税の基礎控除の引き上げ。
   A相続時精算課税制度の特別控除額(2,500万円)の引き上げ。
4 地方税関係
 (1)固定資産税の抜本的見直し
     固定資産税に対しては、長期的な地価の下落にも関わらず負担感が高いとの声が
    多い。さらに、最近、三大都市圏を中心に地価が上昇し始めている。こうした点を
    踏まえ、都市計画税と合わせて評価方法および課税方式の抜本的見直しを求める。
     @商業地等の宅地を評価するに当たっては、より収益性を考慮した評価に見直す。
     A居住用家屋の評価は経過年数に応じた評価方法に見直す。
     B償却資産については、「少額資産」の範囲を国税の中小企業の少額減価償却資
      産(30万円)にまで拡大すべき。また、将来的には廃止も検討すべき。
     C国土交通省、総務省、国税庁がそれぞれの目的に応じて土地の評価を行ってい
      るが、行政の効率化の観点から評価体制は一元化すべき。
 (2)事業所税の廃止
     市町村合併の進行により課税主体が拡大するケースも目立つ。事業所 税は固
    定資産税と二重課税的な性格を有することから廃止を求める。
 (3)超過課税
     住民税の超過課税は、個人ではなく主に法人を課税対象としているうえ、長期
    間にわたって課税を実施している自治体もある。課税の公平を欠く安易な課税は
    行うべきでない。
 (4)法定外目的税
     法定外目的税は、税の公平性・中立性に反することのないよう配慮するととも
    に、税収確保のために法人企業に対して安易な課税は行うべきではない。
5 その他
 (1)配当に対する二重課税の見直し
     配当については、現行の配当控除制度で法人税と所得税の二重課税の 調整が
    行われているものの不十分であり、さらなる見直しを求める。
 (2)電子申告
     国税電子申告(e−Tax)の利用件数は、年々拡大してきているが、さらな
    る利用促進に向けて、制度の一層の利便性向上を図るとともに、地方税の電子申告
    (eLTAX)との一体化の検討、インセンティブとしての法人・個人に対する恒
    常的な税額控除制度の創設等の税制措置を求める。
個別法令・通達関係
T.法令関係
1.法人税関係
[無形減価償却資産]
  (1)電算機のソフトウェアは無形減価償却資産として5年償却となっているが、技術革新の加速化を
    考慮し、期間を3年に短縮すること。
[引当金の損金算入]
  (2)引当金について、次のとおり損金算入を認めること。
    @退職給与引当金は、将来確実に発生する債務を引き当てるものであることから、その繰入につ
     いて損金算入を認めること。
    A賞与引当金は、潜在的には各月に発生する未払い費用としての性格を有していることから、そ
     の繰入について損金算入を認めること。
[電話加入権の損金算入]
  (3)電話加入権については、自動車電話加入権や携帯電話加入権がすでに非償却資産から減価償却資
    産に変更されていることもあり、同様の扱いとすること。
[耐震補強等に係る工事を実施した場合の優遇措置]
  (4)建物等の構造物に対する耐震補強工事を実施した場合、特別償却または税額控除制度を設けるこ
    と。
[法人税の延納]
  (5)不況時等における資金繰りに考慮し、昭和59年に財源対策等から廃止された法人税の延納制度を
    復活すること。なお、その際併せて利子税率を軽減すること。
[申告書の提出期限]
  (6)会社法上の諸手続きを含めた決算事務を2か月以内に完了することが困難であるため、法人税の
    確定申告書の提出期限を事業年度終了後3か月以内(現行2か月以内)とすること。
2.所得税関係
[土地・建物等の損益通算]
  (1)土地・建物等の譲渡により生じた譲渡損失の損益通算および繰越控除を認めること。
[不動産所得の負債利子の損益通算]
  (2)土地等に係る負債利子については、不動産所得の計算上生じた損失がある場合に、他の所得との
    損益通算が認められないこととなっているが、この取扱いはバブル期の措置として設けられたも
    のであり、また所得の計算上、本来認められるべきものであることから損益通算を復活すること。
[医療費控除]
  (3)医療費控除については、最近の医療費の実態に即して、最高限度額を300万円(現行200万円)に
    引き上げること。
[源泉納付]
  (4)源泉所得税の1月の納付期限については、年末調整事務や年末年始の休暇等の特殊事情、および
    週休二日制の普及を考慮し、「納期限の特例」適用者以外の源泉徴収義務者に対しても120
   (現行110日)とすること。
[財産債務明細書]
  (5)財産債務明細書の提出を要する所得基準2000万円は、昭和47年度税制改正以降相当期間を経過
    しているので、4000万円に引き上げること。
3.相続税・贈与税関係
[保険金・死亡退職金の非課税限度額]
  (1)保険金・死亡退職金の非課税限度額については、昭和63年度の改正で法定相続人一人当たり500
    万円とされたが、相当期間経過しているので、1000万円に引き上げること。
[相続財産からの控除]
  (2)相続開始後に発生する相続に伴う費用(遺言執行費用、税理士・弁護士報酬等)は、相続税の課
    税財産から控除すること。
[被相続人の保証債務の弁済]
  (3)相続後の一定期間内に保証債務の履行があり、その求償権の行使が不能の場合、更正の請求がで
    きるようにすること。
[贈与税の配偶者控除]
  (4)贈与税における居住用不動産の配偶者控除額2000万円は、昭和63年以来据え置かれているの
    で、3000万円に引き上げること。
4.消費税関係
[消費税の確定申告書の提出期限]
  (1)消費税の確定申告書の提出期限は、前述の法人税の確定申告書の提出期限に合わせ、課税期間終
    了後3か月以内(現行2か月以内)とすること。なお、上記改正が行われるまでの間においても、
    法人税の申告期限の延長特例を受けている法人については、消費税についても申告期限の延長を
    認めること。
[消費税の届出書の提出期限]
  (2)消費税の各種届出書の提出は、消費税の申告・納付上、納税者にとって重要な事項であるが、そ
    の提出の失念により納税者が思わぬ不利益を被ることがあり、また、慎重な判断をする必要な場
    合もあることから、前課税期間の消費税の確定申告書の提出期限(現行は課税期間の開始日の前
    日)まで延長すること。
5.印紙税関係
[印紙税]
  印紙税については、電子取引の拡大や手形決済の省略など、取引慣行の変化に伴い、課税根拠が希薄
 化している。文書作成の有無による課税は公平性を欠くので廃止すること。
6.地方税関係
[固定資産税]
  (1)固定資産税の免税点については、平成3年以降改定がなく据え置かれているため、大幅に引き上
    げること。
  (2)建物等の構造物に対する耐震補強工事を実施し、資産価値が上昇した場合の固定資産税や都市計
    画税は減免すること。
[法人事業税]
  (3)法人事業税について次のとおり改正すること。
    @資本金1000万円以上で3都道府県以上に事業所を有する法人の法人事業税については、所得
     区分別の軽減税率が適用されないこととなっているが、この制度を廃止すること。
    A二以上の地方自治体に事務所または事業所を有する法人の法人事業税・住民税の申告納税は、
     本店所在地において一括して行うことができるようにすること。
[個人住民税]
  (4)納入先市区町村が複数ある場合の個人住民税の特別徴収については、特別徴収義務者の事務の簡
    素化等に資するため、納入先市区町村別の明細書を添付することにより、当該事業所を所轄する
    市区町村において、一括納入ができるようにすること。
    また、併せて地方税の申告書・納付書の規格、様式の統一を図ること。
[欠損金繰戻し還付制度・延納制度]
  (5)住民税・事業税についても、法人税と同様に欠損金繰戻し還付制度を創設すること。また、地方
    税にも延納制度を設けること。
[償却資産]
  (6)固定資産税のうち、償却資産の評価にあたっては、納税者の事務負担軽減の観点から、法人税の
    減価償却資産と連動させ、賦課期日を各法人の事業年度末とすること。
U.通達関係
1.法人税関係
[修繕費]
  (1)資本的支出と修繕費の区分が不明確である場合の形式的区分基準について、修繕費としての認定
    の範囲を次のとおり改めること。
    @修理・改良等に要した金額が100万円(現行60万円)に満たない場合
    A修理・改良等に要した金額が取得価額のおおむね20%(現行10%)相当額以下である場合
[借地権]
  (2)相当の地代の認定基準概ね6%程度については、地代の収益状況および金利水準の変化に応じて
    見直しを行い、当面3%程度に引き下げること。
2.相続税関係
[取引相場のない株式の評価]
  (1)類似業種比準方式の斟酌率を、中会社および大会社についても50%に引き下げること。
  (2)純資産価額方式による評価にあたっては、従業員退職金の期末要支給額の全額を負債として取り
    扱うこと。

<平成27年度税制改正に関するスローガン>
・まだ道半ば。国・地方とも聖域なき行財政改革の推進を!
・厳しい経営実態を踏まえ、中小企業の活性化を図る税制を!
・法人の実効税率を20%台に引き下げ、軽減税率も15%の
 本則化とする見直しを!
・本格的な事業承継税制を確立し、地域経済を支える中小企業に配慮を!